CraftのPure Trail Xは、トレイルランニングシューズのアップデート版として、前作のPure Trailの欠点を改善し、より耐久性と安定性を高めたモデルだ。このシューズは、険しい山道や岩場での使用を想定し、クッション性と保護機能を強化している。レビューでは、全体的なビルドクオリティから快適性、パフォーマンスまでを詳しく検証し、トレイルランナーにとっての価値を探る。朝の冷たい空気の中、コロラドの岩だらけのトレイルでテストした結果、このシューズは冒険的なランニングに適した一足であることが明らかになった。
概要
Craft Pure Trail Xは、トレイルランニングのプログレードシューズとして設計され、フルCRフォームのミッドソールを採用している。このミッドソールはクッション性、安定性、そして爆発的なエネルギーリターンを提供しつつ、重量を軽減する工夫が施されている。露出したロックプレートがミッドフットとフォアフットの下に配置され、安定性と保護を確保する。また、アウトソールは多様なオフロード地形に対応したフルトラクション設計だ。アッパー素材はリサイクルポリエステルリップストップで、優れた耐引裂強度を持ち、耐久性の高いTPUで補強されている。このシューズは、イノベーションの結晶として、ランナーにクラス最高のパフォーマンスと快適性を約束する。全体として、前作のPure Trailからミッドソールのスタックハイトを増やし、フルロックプレートを追加し、アッパーのフィットを洗練させることで、足の動きを抑え、より信頼性の高い走行を実現している。険しい地形での使用を念頭に置いた設計は、日常のトレイルランではなく、特別なアドベンチャーに向いている。
スペックと特徴
Pure Trail Xのスペックは、トレイルランニングの厳しい環境に耐えうるよう工夫されている。以下に主なものをまとめる。
- アッパー: リップストップポリエステルにTPUオーバーレイ
- ミッドソール: CRフォーム(15% PEBAスーパーフォーム注入)
- ロックプレート: フルロックプレート
- アウトソール: フルラバーアウトソール、4mmラグ
- フィット: ヒールとミッドフットはタイト、フォアフットに余裕あり(Craftのレギュラーフィット)
- スタックハイト: ヒール36mm、トゥ30mm(ドロップ6mm)
- 重量: 320g(27cm、US9)
これらの特徴により、シューズは耐久性と保護性を重視した構造となっている。CRフォームのミッドソールは応答性が高く、PEBAの注入でエネルギーリターンを向上させている。アウトソールのラグパターンは、岩場や泥地でのトラクションを確保し、多様な地形に対応する。
ビルドクオリティ
Pure Trail Xのビルドは、Craftの伝統的な高品質さを体現している。アッパーはリップストップポリエステル製で、非常に耐久性が高く、TPUオーバーレイがトゥやサイドを保護する。これにより、岩や枝による擦過から素材を守り、長期間の使用に耐える。ガセットタンは足の動きを安定させ、ヒール部分のパッドとフレアデザインはアキレス腱への摩擦を防ぐ。ミッドソールはCRフォームを基調とし、耐久性が抜群で、劣化しにくい特性を持つ。フルロックプレートはトゥからヒールまで延び、鋭い岩からの保護を提供する。アウトソールラバーはVibram Megagripに匹敵するグリップ力を持ち、耐摩耗性が高い。全体として、素材の選択と構造の工夫が、過酷な山岳環境での信頼性を高めている。この耐久性は、シューズの寿命を延ばし、ランナーが長く頼れる一足に仕上げている。Craftのクラフトマンシップが随所に感じられ、細部まで丁寧に作られている点が印象的だ。
快適性
快適性については、アッパーが優位性を発揮する。リップストップ素材は柔らかく、足に馴染みやすいが、タンはもう少し密度の高いパッドが欲しいところだ。ヒールとミッドフットのフィットはタイトで、足のずれを最小限に抑え、トゥボックスにはトゥの広がりを許す余裕がある。これにより、長時間のランでも疲労が蓄積しにくい。一方、ミッドソールは硬めで、5年前のSalomonシューズのような感触を思い起こさせる。応答性はあるものの、柔らかさが不足し、日常の快適性を損なう可能性がある。それでも、トレイルでの使用では、全体のバランスが楽しく感じられる不思議な魅力がある。岩場や谷間を進む中で、足元が安定し、野生動物や風景に気を取られるほどリラックスできる。快適性は上部が優れ、下部がやや硬質という二面性を持ち、用途によって評価が分かれるだろう。このバランスは、Pure Trail Xを日常使いではなく、特定のシーン向けに位置づける。
パフォーマンス
パフォーマンス面では、アウトソールが際立つ。Craft独自のラバーブレンドは、岩場や湿った地形で優れたグリップを発揮し、急な登りでも滑りにくい。フルロックプレートが鋭い岩から足を守り、安定性を高める。ミッドソールのCRフォームは応答性が高く、ペースを上げた際にフィードバックを提供するが、硬さと重量のため高速ランには向かない。トレイルとのつながりがやや薄く、足が地形に適応しにくい感覚があるものの、不安定さは感じない。アッパーのロックダウンは前作より改善され、横方向の動きを抑え、トゥボックスの余裕が自然なトゥスプレッドを許す。険しい山道や岩だらけのトレイルでテストした結果、グリップと保護の組み合わせが自信を与え、冒険的なランを支える。全体として、硬めのミッドソールが日常性を制限するが、特殊な地形では優れたパフォーマンスを発揮する。このシューズは、技術的なトレイルで真価を発揮し、ランナーの集中力を高める設計だ。
オリジナルモデルとの比較
Pure Trail Xは、前作のPure Trailからいくつかの改善を施している。以下に両モデルの比較を表でまとめる。
| 項目 | Pure Trail | Pure Trail X |
|---|---|---|
| 重量 | 約300g(27cm、US9) | 320g(27cm、US9) |
| スタックハイト | ヒール32mm、トゥ26mm(ドロップ6mm) | ヒール36mm、トゥ30mm(ドロップ6mm) |
| ドロップ | 6mm | 6mm |
| 主な技術 | CRフォームミッドソール、部分ロックプレート | CRフォーム(15% PEBA注入)、フルロックプレート |
| 特徴 | 冒険的な山岳シューズだが、フィットが緩めで足が動く | ミッドソールスタック増加、フルロックプレートで保護強化、アッパーフィット改善で安定性向上 |
| 弱点 | アッパーのずれ、保護不足 | ミッドソールの硬さ、重さによる日常性の制限 |
この比較から、Pure Trail Xは耐久性と保護を優先し、前作の欠点を解消したことがわかる。ミッドソールのスタック増加とフルロックプレートが、岩場での安定性を高め、アッパーの洗練が全体のパフォーマンスを向上させている。一方、重さと硬さが加わったことで、汎用性がやや低下した。こうした進化は、トレイルシューズのトレンドを反映し、より専門的な用途に向けたシフトを示唆する。
良い点
Pure Trail Xの強みは、過酷な環境での信頼性にある。
- 耐久性の高いアッパーとTPUオーバーレイで、長寿命を実現。
- 優れたグリップのアウトソールが、岩場や湿地で自信を与える。
- フルロックプレートによる保護で、足の疲労を軽減。
- 応答性の高いミッドソールが、ペースアップ時にフィードバックを提供。
- フィットの改善で、足の安定性が向上し、冒険的なランを楽しめる。
悪い点
一方で、いくつかの弱点も存在する。
- ミッドソールの硬さが、快適性を損ない、日常使いに不向き。
- 重さが高速ランを制限し、軽快さを欠く。
- トレイルとのつながりが薄く、地形適応がやや難しい。
- タンのパッドが薄めで、長時間使用時の快適性が不足。
改善点
将来的なアップデートでは、以下の点を考慮すべきだ。
- ミッドソールを柔らかくし、クッション性を向上させる。
- 重量を軽減して、汎用性を高める。
- タンのパッドを強化し、全体の快適性をバランスよく調整。
- トレイルフィールを強めるために、ロックプレートの柔軟性を検討。
これらの改善により、Pure Trail Xはより幅広いランナーにアピールできるだろう。
結論
Craft Pure Trail Xは、前作の欠点を克服し、耐久性と保護を重視したトレイルシューズとして進化した。グリップの良さとロックプレートの保護が、険しい山岳ランで優位性を発揮する一方、ミッドソールの硬さが日常性を制限する。トレイルランナーにとって、このシューズは特殊なアドベンチャー向けの選択肢として推奨できるが、日常使いを求めるなら他のモデルを検討すべきだ。業界全体では、こうした専門化が進む中、耐久性と快適性のバランスが今後の鍵となる。トレイルランニングの未来は、地形適応とイノベーションの融合によって、さらに豊かなものになるだろう。
参考資料