ASICSの最新ランニングシューズ、MEGABLASTは、同社のBLASTシリーズに新たに加わったモデルだ。このシューズは、さまざまなランニングスタイル、速度、距離に対応するダイナミックなデイリートレーナーとして設計されており、スーパーブラストのよりエネルギッシュなバージョンとして位置づけられる。従来のスーパーブラストと比較して、MEGABLASTは新しいフォーム素材を採用し、より弾むようなライドを提供する点が特徴的である。本記事では、このシューズのスペックからフィット感、ランニング体験までを詳しく分析し、ランナーにとっての意義を探る。ASICSがTPUベースのフォームにシフトする動きは、業界全体のトレンドを反映しており、耐久性とパフォーマンスのバランスを再定義する可能性を秘めている。
概要
MEGABLASTは、ASICSのBLASTファミリーの一員として、ノヴァブラストやスーパーブラスト、ソニックブラストと並ぶ存在だ。このシューズは、日常のトレーニングからレースペースまで幅広く対応するよう設計されており、特にエネルギーリターンの高さが注目される。ミッドソールに新開発のFF TURBO²フォームをフルレイヤーで搭載し、従来のモデルよりも軽量でレスポンシブな走りを実現している。ランナーの多様なニーズに応じる柔軟性が強みであり、疲労した脚に活力を注入するような感覚を提供する。ASICSは、このモデルを通じて、TPUフォームの利点を活かし、EVAやPAベースのフォームからの進化を示している。これにより、シューズの乗り味がよりダイナミックになり、日常のランをより楽しめるものに変える可能性がある。全体として、MEGABLASTは安定性とバウンスのトレードオフを意識した設計であり、ランナーの選択肢を広げる一足だと言える。
スペック
MEGABLASTの基本スペックは、スーパーブラスト2と類似しているが、細部に違いが見られる。以下に主な仕様をまとめる。
- スタックハイト: ヒール45mm、フォアフット37mm
- ドロップ: 8mm
- 重量: 27cm (US9) で約230g
- ミッドソール: FF TURBO²フォーム (ATPUベース、フルレイヤー)
- アウトソール: ASICSGRIP™
- アッパー: エンジニアードメッシュ
これらのスペックは、軽量さとクッション性を両立させた設計を反映している。特に、ミッドソールの新素材は、従来のフォームよりも耐久性と弾力性に優れる可能性があり、長距離ランナーにとって魅力的なポイントとなる。
スーパーブラスト2との比較
MEGABLASTとスーパーブラスト2は、ASICSのハイエンドトレーナーとして共通点が多いが、ミッドソールの構成や乗り味で明確な差別化が図られている。スーパーブラスト2はデュアルレイヤーのミッドソールを採用し、安定性を重視したコントロールされた走りを提供する。一方、MEGABLASTはシングルレイヤーの新フォームにより、より軽快でバウンシーな体験を実現している。この違いは、ランナーの好みや用途によって選択の分かれ目となる。以下に比較表を示す。
| 項目 | MEGABLAST | スーパーブラスト2 |
|---|---|---|
| 重量 | 27cm (US9) で約230g | 27cm (US9) で約250g |
| スタックハイト | ヒール45mm、フォアフット37mm | ヒール45mm、フォアフット37mm |
| ドロップ | 8mm | 8mm |
| 主な技術 | FF TURBO²フォーム (ATPUベース、フルレイヤー) | FF BLAST ECO (EVAベース) + FF BLAST TURBO PLUS (PAベース、デュアルレイヤー) |
| 特徴 | よりバウンシーでエネルギッシュ、レーシーなアッパー | コントロールされた安定性、日常使いに適した快適さ |
| 弱点 | 安定性がやや劣る、ワイルドな乗り味 | バウンスが控えめ、重量がやや重い |
この表からわかるように、MEGABLASTは重量を約20g削減し、フォームの変更によりレスポンスを向上させている。スーパーブラスト2のデュアルレイヤーは、着地時の安定を強化するが、MEGABLASTのシングルレイヤーはエネルギーリターンを優先した結果、走りのダイナミズムを高めている。こうした比較は、ランナーが自身の走行スタイルに合ったシューズを選ぶ際の参考となるだろう。ASICSのこのアプローチは、素材革新を通じてパフォーマンスの多角化を図る戦略を体現しており、将来的に他のモデルへの波及が期待される。
フィット感とアッパー
MEGABLASTのフィット感は、真のサイズ感を提供するが、トゥボックスに若干の狭さを感じる場合がある。アッパーはエンジニアードメッシュを採用し、薄く透明感のあるレーシングスタイルが特徴だ。この素材は通気性を高め、長時間のランでも快適さを維持する。レース部分にはソートゥース型のシューレースが用いられ、多くのスーパーシューズで見られるようなミニマルなデザインを踏襲している。タンは最小限のパッドで部分的にガセットされており、フィット感を高めつつ、余計な重さを排除している。一方、ヒールカラー周りには十分なクッションが施され、日常の快適さを確保する点が工夫されている。
スーパーブラスト2と比較すると、MEGABLASTのアッパーはよりレーシーで、日常トレーナーらしい柔らかさよりもパフォーマンス志向が強い。トゥボックスの幅が狭く、先端に向かって急激にテーパーする形状は、幅広の足を持つランナーには注意が必要だ。サイズ選びでは、通常サイズよりハーフサイズアップを検討すると良いかもしれない。実際に24kmのロングランを試したところ、ホットスポットなどの問題は発生しなかったが、フィットの好みによってはスーパーブラスト2の寛容さが優位に働く。ASICSはこのアッパー設計を通じて、軽量さとサポートのバランスを追求しており、ランニングシューズの進化を象徴する要素となっている。全体として、このフィットはエネルギッシュな走りを支える基盤となり、シューズのポテンシャルを最大限に引き出す。
ランニング体験
MEGABLASTを履いて走ると、すぐにミッドソールの柔らかさが際立つ。スーパーブラスト2よりも顕著にソフトで、バウンシーな感触が特徴だ。初回の10kmイージーランでは、シューズが多くの作業を代行するような感覚があり、走りが自然と軽やかになる。エネルギーを注入するような乗り味は、マラソントレーニングの後半で疲労した脚に適しており、ラン全体の楽しさを向上させる。対照的に、スーパーブラスト2はよりコントロールされた安定性を提供し、ミッドソールの幅広さとデュアルレイヤーにより、着地時の安心感が高い。
ヒールストライカーにとっては、ヒールの厚いフォームが楽しい着地を実現するが、サポートサイドウォールの少なさから、若干の不安定さが生じる。コンプライアントなフォームゆえに、ワイルドな乗り味となり、時折足元が不安定になる可能性がある。安定性を重視するランナーにはスーパーブラスト2が適するが、MEGABLASTはバウンスを犠牲にしない選択肢として魅力だ。このシューズは、非カーボンプレートのマラソンペースシューズとして機能し、ハーフマラソンやテンポランに適している。日常のイージーマイルでも快適で、3〜4週間の使用でその汎用性が確認された。ASICSGRIP™アウトソールはウェットコンディションでもグリップを発揮し、ノヴァブラストシリーズの課題を解決する可能性を秘めている。全体のランニング体験は、フォームの革新がもたらす新しい次元を示しており、ランナーのモチベーションを維持する役割を果たす。
良い点
MEGABLASTの強みは、複数の側面で顕在化する。以下に主なメリットを挙げる。
- 卓越したバウンス:FF TURBO²フォームの採用により、近年稀に見るエネルギーリターンを提供し、走りが effortless に感じられる。
- 軽量設計:スーパーブラスト2より軽く、疲労軽減に寄与する。
- 通気性と快適さ:アッパーのメッシュ素材が息苦しさを防ぎ、ヒールカラーのクッションが長時間ランをサポート。
- 汎用性:デイリートレーナーとしてイージーランからテンポワークまで対応可能。
- グリップ力:ASICSGRIP™アウトソールがウェット路面で信頼性を発揮。
- レーシーなフィール:上級者向けのデザインが、パフォーマンスを高める。
これらの点は、シューズの総合的な魅力を高め、多様なランナーに適応する。
悪い点
一方で、MEGABLASTにはいくつかの弱点も存在する。以下にデメリットをまとめる。
- 安定性の不足:スーパーブラスト2に比べてワイルドで、ワブルが生じやすい。
- トゥボックスの狭さ:幅広足には不向きで、サイズ選びが重要。
- 耐久性の不明瞭さ:新フォームの長期耐久性が未確認のため、数百km後の状態が懸念される。
- ヒールストライク時の不安定さ:サポートサイドウォールの薄さが、つまずきを招く可能性。
これらの問題は、安定性を優先するランナーにとって考慮すべき点だ。
改善点と今後の展望
MEGABLASTの改善点として、安定性の強化が挙げられる。例えば、ミッドソールのサイドウォールを厚くするか、ジオメトリーを調整することで、ワイルドさを抑えつつバウンスを維持できるだろう。また、トゥボックスの幅を広げることで、幅広い足型に対応し、アクセシビリティを向上させる。耐久性については、長期テストの結果を待つ必要があるが、TPUフォームの特性を活かせば、数百kmの使用に耐える可能性が高い。アウトソールのグリップは優れているため、他のBLASTシリーズへの適用を検討すべきだ。
将来的には、ASICSのこのアプローチが、業界のフォーム素材シフトを加速させるかもしれない。TPUの resilence が標準化すれば、非カーボンシューズの競争力が向上し、ランナーの選択肢が増える。MEGABLASTは、そうしたトレンドの先駆けとして位置づけられるだろう。
結論
MEGABLASTは、ASICSのイノベーションを体現したシューズであり、バウンシーな乗り味と軽量さが最大の魅力だ。スーパーブラスト2との比較では、エネルギー重視のランナーに向き、安定性を求める場合は前者を推奨する。全体として、2025年のベストシューズ候補として評価できるが、耐久性と安定性の確認が鍵となる。このモデルは、ランニングシューズの未来を予感させ、素材の進化がパフォーマンスの境界を広げる可能性を示唆する。ランナーは自身のスタイルに照らし、慎重に選択することで、より充実したトレーニングを実現できるだろう。
参考資料

