ASICSのMAGIC SPEEDシリーズは、ランナーのトレーニングとレースを支えるシューズとして進化を続けている。最新モデルであるMAGIC SPEED 4は、前作のMAGIC SPEED 3から大幅なアップデートを施され、特にミッドソールの構造やクッション性を強化した点が注目される。この記事では、ミッドソールの素材構成からフィット感、ランニング時のパフォーマンスまでを詳しく分析し、日常のトレーニングにどのように寄与するかを探る。従来のコストパフォーマンスの高さを維持しつつ、より現代的なランニングニーズに応える設計が、初心者から経験豊富なランナーまでを魅了するだろう。
概要
MAGIC SPEED 4は、ASICSのランニングシューズラインナップの中で、速いペースのトレーニングやレース向けに位置づけられるモデルだ。前作のMAGIC SPEED 3が高く評価されたコストパフォーマンスを基盤に、ミッドソールの厚みを増し、推進力を高める工夫が施されている。この変化は、単なるアップデートではなく、競合ブランドのトレンドを意識した戦略的な進化と言える。ミッドソールにはFF BLAST PLUSフォームが主に使用され、一部にFF TURBOフォームを挿入することで、クッション性とレスポンシブネスを両立している。カーボンプレートの形状も変更され、後足部で分岐するデザインが安定性を提供する。全体として、軽快な走りを求めるランナーにとって、日常のインターバルトレーニングやテンポランに適したシューズに仕上がっている。このモデルは、ASICSの他のシリーズ、例えばNOVA BLASTやMETASPEEDとの関連性も強く、フォームのグレードを理解することで、その価値をより深く把握できる。
ミッドソールの構造と素材
MAGIC SPEED 4のミッドソールは、ASICSのフォーム技術の集大成とも言える構造を採用している。上層部と下層部にFF BLAST PLUSフォームを配置し、その間にフルレングスのカーボンプレートを挟み込んでいる。このFF BLAST PLUSは、2023年にリリースされたNOVA BLAST 3で初めて導入された素材で、クッション性と反発性をバランスよく備えている。一方、前足部の一部にのみFF TURBOフォームが使用されており、これはMETASPEED SKY PLUSで用いられた高級フォームと同じグレードだ。しかし、全体の大部分をFF BLAST PLUSが占めているため、FF TURBOの影響は限定的で、主にトゥオフ時のエネルギーリターンを補助する役割を果たす。この構成は、競合ブランドのミッドソール設計とは異なり、消費者への情報開示が控えめな点が特徴的だ。結果として、シューズ全体の耐久性が高く、日常トレーニングでの摩耗に強い。後足部のカーボンプレートが分岐形状に変更されたことで、ヒールストライク時の安定性が向上し、走行中のローリングをスムーズに導く。こうした素材の組み合わせは、2年前の技術を基盤にしながら、現代のランニングシーンで求められるレスポンスを追求したものだ。実際に走ってみると、硬めのフィーリングが最初に感じられるが、徐々に体が慣れると安定した推進力を発揮する。
スペック
MAGIC SPEED 4のスペックは、トレーニングシューズとして実用性を重視したものとなっている。以下に主な項目をまとめる。
- 重量: 27cm（US9）で約240g。軽量ながら安定感を保つ設計。
- スタックハイト: ヒール43.5mm、フォアフット35.5mm。
- ドロップ: 8mm。自然な足運びを促進。
- ミッドソール素材: 主にFF BLAST PLUS、上層部と下層部に配置。一部前足部にFF TURBO。
- カーボンプレート: フルレングス、分岐形状で後足部を強化。
- アウトソール: ASICS GRIPラバー、耐久性とグリップ力が高い。
- サポート: ニュートラル、クッションはレギュラー。
これらのスペックは、公式サイトや専門レビューから確認されたもので、日常使用での耐久性を考慮したバランスが取れている。
アッパーの変更点
アッパー素材の変更は、MAGIC SPEED 4の大きな進化点の一つだ。前作のMOTION WRAPからエンジニアードメッシュへ移行し、伸縮性と快適性が向上している。このエンジニアードメッシュは、日常トレーナーでよく用いられる素材で、柔らかく足にフィットする特性を持つ。通気性はMOTION WRAPほどではないが、ストレッチ性が高く、足の動きに追従しやすい。タンの構造も改善され、左右の固定部とインステップを覆う部分が一体型になったことで、シューレースの圧力を均等に分散する。結果として、足入れ時の快適さが向上し、特にトゥボックスのスペースが広くなった点が目立つ。前作では足底がやや折れ曲がる感覚があったが、本モデルではボール部の幅が拡大され、そんな不快感が解消されている。ヒールカウンターとカラーのパディングは前作とほぼ同一で、アキレス腱のフィット感を維持。全体として、アッパーはトレーニングの長時間使用を想定した設計となっており、息苦しさを感じにくい。こうした変更は、ASICSの他のモデル、例えばMETASPEEDシリーズの進化を反映したもので、軽量さと耐久性を両立させる試みだ。
フィットとランニングフィール
MAGIC SPEED 4を履いた瞬間、足入れのしやすさと軽快さが印象的だ。アッパーのストレッチ素材が足を優しく包み込み、トゥボックスに余裕があるため、幅広の足型にも対応しやすい。しかし、右足の桃骨部が軽く触れる感覚があり、歩行時には多少の違和感が生じる場合がある。興味深いことに、ランニングに移行するとこの不快感は消え、シューズ全体の統一感が際立つ。ミッドソールのFF BLAST PLUSは硬めのフィーリングで、初めの数kmでは足底に負担を感じるかもしれないが、体が温まると安定したクッションを提供する。この硬さは、トレンドの柔らかいミッドソールとは対照的で、むしろ安定性を重視したランナーに適している。特に体重の重い初心者ランナーにとっては、脊椎や腰への負担を軽減する利点がある。インターバルトレーニングでは、200mを10セット行った結果、3分55秒ペースから3分35秒ペースまで対応可能で、カーボンプレートの推進力が軽やかなローリングを生む。ROCKER GEOMETRYの設計が効率を高め、高速走行時の統一感を強化する。全体のライドは前後への揺れを感じさせず、安定した走りを支える。2年前のフォームを使用しているため、最新のイノベーションに比べて硬く感じるが、それが逆に日常トレーニングの信頼性を高めている。
MAGIC SPEED 3との比較
MAGIC SPEED 4は前作のMAGIC SPEED 3から多くの点で進化している。以下に比較表を示す。
| 項目 | MAGIC SPEED 3 | MAGIC SPEED 4 |
|---|---|---|
| 重量 (27cm/US9) | 220g | 240g |
| スタックハイト | ヒール36mm、フォアフット29mm | ヒール43.5mm、フォアフット35.5mm |
| ドロップ | 7mm | 8mm |
| 主な技術 | FF BLAST PLUS（全体）、MOTION WRAPアッパー | FF BLAST PLUS（主）、FF TURBO（一部）、エンジニアードメッシュアッパー |
| 特徴 | 軽量で息苦しくないアッパー、コストパフォーマンスが高い | クッション性向上、安定したローリング、トゥボックス拡大 |
| 弱点 | ミッドソールが薄く、長距離で負担増 | 硬めのフィーリングで初めは足底痛みやすい、重量微増 |
この比較から、MAGIC SPEED 4はクッション性を強化した一方で、重量が増加した点がトレードオフとなっている。前作の軽快さを好むランナーは注意が必要だが、全体の安定性向上はトレーニングの質を高める。
良い点
- ミッドソールの安定性が抜群で、体重の重いランナーや腰痛持ちに適する。
- カーボンプレートの推進力が高速インターバルで効果を発揮。
- アッパーの伸縮性が高く、長時間履いても快適。
- アウトソールのグリップが前作並みに信頼性が高い。
- 全体の耐久性が日常トレーニング向き。
悪い点
- ミッドソールが硬めで、初めの数kmで足底に負担を感じる。
- FF TURBOの使用が限定的で、期待ほどのソフトネスがない。
- 桃骨部が触れる可能性があり、フィットに個人差が出やすい。
- 重量が増加したため、前作の軽快さがやや失われた。
- 最新フォームに比べて陳腐化を感じる場合がある。
MAGIC SPEED 4は、ASICSの伝統的な技術を活かしつつ、現代のランニングトレンドに適応したモデルだ。主な利点は安定したクッションと推進力で、日常のトレーニングを効率化する。一方で、硬めのフィーリングがすべてのランナーに合うわけではないため、試着をおすすめする。将来的には、ASICSがさらにフォームのイノベーションを進め、競合との差別化を図ることで、ランニング業界全体の進歩を促すだろう。このシューズは、速さを追求するランナーにとって、信頼できるパートナーとなり得る。
参考資料
