HOKAの最新トレイルシューズ、Mafate Xは、最大級のクッション性を備えたモデルとして注目を集めている。このレビューでは、約53kmの走行テストに基づき、フィット感から性能までを詳しく検証する。ウルトラディスタンスを目指すランナーにとって、足への負担を最小限に抑えつつ安定した走りを支える可能性を探る。従来のMafateシリーズのイメージを覆す設計が、トレイルランニングの新たなスタンダードを提案するかもしれない。
概要
Mafate Xは、HOKAのトレイルラインナップに新たに加わったマックススタックモデルだ。従来のトレイルシューズが軽量さと敏捷性を重視する中、このシューズはクッションの厚みを武器に、長距離での快適さを追求している。カーボンプレートを搭載しつつ、スーパーシューズではなくスーパートレーナーとして位置づけられる点が特徴的だ。バッファードトレイルや軽いテクニカル地形でのクルージングを想定し、足を優しく包み込むフォームが、ウルトラレースのような耐久走行で真価を発揮する。シリーズ名から連想されるガナリーな地形対応とは異なり、むしろChallengerシリーズに近い汎用性を備えている。この設計思想は、トレイルランニングの多様化を反映しており、ペースを維持しつつ距離を稼ぐランナーに適した選択肢となる。
フィット感
Mafate Xのフィットは、HOKAの他のトレイルモデルと比べてトゥボックスが広めに設計されており、足の幅広いユーザーにとって好印象を与える。真サイズで問題なく着用可能で、ぴったりとしたフィットを実感した。ベース部分も広く安定感が高く、足の腫れを許容する余裕があるため、長時間のランニングでもストレスを感じにくい。HOKAの最近のモデルがトゥボックスを狭くする傾向にある中、このシューズは幅広の足に対応する可能性を広げている。全体として、足を自然に収めつつ、動きを制限しないバランスが取れており、トレイルでの自然なステップを促進する。こうしたフィットは、ウルトラディスタンスでの疲労蓄積を軽減する基盤となる。
スペック
Mafate Xの基本スペックは、長距離トレイルに特化したものだ。
- 重量: 27cm（US9）で344g
- スタックハイト: ヒール49mm、フォアフット41mm
- ドロップ: 8mm
- アウトソール: Vibram Megagrip、3.5mmラグ
- アッパー: 息通しの良いメッシュ、頑丈なヒールカウンター
- ミッドソール: PEBAフォームとカーボンプレートの組み合わせ
これらの要素が、クッションと安定性を両立させる基盤を形成している。
特徴
Mafate Xの特徴は、圧倒的なクッション性に集約される。
- ミッドソールのPEBAフォームが柔らかく、足元を快適に保つ。
- カーボンプレート搭載で推進力を補助しつつ、柔軟性を維持。
- アッパーはTecton X2を彷彿とさせる息通しとロックダウン。
- アウトソールのパターンはピザやタコスを思わせるユニークさで、グリップを確保。
- 水辺通過後の排水性が高く、トレイルの多様な条件に対応。
これらの特徴が融合し、ロードからトレイルへの移行をスムーズにする。
良い点
Mafate Xの強みは、クッションの快適さが際立つ点にある。フォームの柔らかさは最近のHOKAモデルで最高レベルで、ロード、バッファードトレイル、グラベル道での走行を心地よくする。ウルトラディスタンスレース、例えばコカドナ250のような長丁場で、足を優しく守る役割を果たす。カーボンプレートはペースを安定させ、8分/km前後でロックイン可能な巡航性能を提供。アッパーの息通しと排水性は、水辺を越えても快適さを維持し、ヒールカウンターの頑丈さがずれを防ぐ。3.5mmラグのVibramアウトソールは、軽いテクニカル地形でもグリップを発揮し、マイルを積む長跑に適している。全体として、ペースを気にせず距離を伸ばすシーンで真価を発揮する。
悪い点
一方で、Mafate Xの弱点は重量の重さが目立つ。27cm（US9）で344gと、マックスクッションシューズの中でも重い部類に入り、長距離でフォームの快適さを享受しつつ、重さを感じる場面がある。テクニカルトレイルではアンクルが不安定になりやすく、ガナリーな地形には不向きだ。カーボンプレート搭載ながらスーパーシューズのカテゴリではなく、6分/kmペースでの高速走行には向かない。Mafateの名を冠するが、従来のシリーズのような耐久性重視ではなく、Challenger寄りの性格が混乱を招く可能性もある。これらの点は、用途をバッファードトレイルに絞ることで緩和される。
トレイルでの性能
Mafate Xのトレイル性能は、クッションの厚みがもたらす安定感に支えられている。バッファードトレイルや軽いテクニカル地形では、フォームが衝撃を吸収し、足をベビー扱いするように守る。Vibramアウトソールのグリップは泥地でも機能し、約53kmのテストで耐久性を確認できた。水辺通過後の排水性が高く、連続した走行を妨げない。一方で、テクニカルな岩場や急坂では高スタックが不安定さを生み、アンクルの負担が増す。こうした性能は、ウルトラマラソンのトレーニングに適しており、ペースを維持しつつ距離を稼ぐランナーに向く。全体のバランスは、トレイルの多様性を考慮した設計を物語る。
比較
Mafate Xを他のHOKAモデルと比較すると、そのクッション重視の性格が明確になる。Tecton X2は軽量で速さを追求する一方、Mafate Xは快適さを優先。Challenger 8はロードtoトレイルの汎用性が高いが、スタックが薄い。
| 項目 | Mafate X | Tecton X2 | Challenger 8 |
|---|---|---|---|
| 重量 | 344g (US9) | 240g (US9) | 275g (US9) |
| スタックハイト | 49/41mm | 32/27mm | 44/37mm |
| ドロップ | 8mm | 5mm | 7mm |
| 主な技術 | PEBAフォーム、カーボンプレート | デュアルプレート、ProFly+ | J-Frame、エンジニアドメッシュ |
| 特徴 | マックスクッション、長距離快適 | 軽量高速、テクニカル対応 | 汎用性高く、安定 |
| 弱点 | 重く、テクニカル不向き | クッション薄め | 極端な保護不足 |
この比較から、Mafate Xは長距離特化型として差別化されている。
改善点
Mafate Xの改善点として、重量の軽減が挙げられる。現在の重さが長距離での負担を増すため、次モデルではフォームの素材見直しで軽量化を図るべきだ。また、テクニカル地形への適性を高めるため、ラグの深さやベースの安定性を強化する余地がある。シリーズ名のイメージと実際の性能のギャップを解消するため、マーケティングでの明確化も必要だろう。これらの改善により、ウルトラランナーの選択肢がさらに広がる可能性がある。
結論
Mafate Xは、重量を除けばトレイルランニングの快適さを再定義するシューズだ。クッションの厚みが長距離での足保護を実現し、ウルトラマラソンのトレーニングに適した選択肢となる。バッファードトレイルでペースを維持し、マイルを積む用途にバランスが取れている。一方で、テクニカル地形や高速走行には限界があり、用途を絞った活用が鍵だ。このモデルは、トレイルシューズの進化を象徴し、クッションと耐久性のトレードオフを考えるきっかけを提供する。業界全体として、こうした高スタック設計が今後のスタンダードとなるか、注目に値する。ランナーは自身の走行スタイルに照らし、慎重に選んでほしい。
参考資料
