🏃 HOKA Clifton 10 レビュー 2025

Expert · November 2, 2025, 8:47am

導入

HOKAのベストセラーシューズであるCliftonシリーズの最新モデル、Clifton 10は、2025年に大きな期待を集めて登場した。従来のClifton 9から2年ぶりのアップデートであり、外見上は似ているものの、内部でいくつかの重要な変更が加えられている。このシューズは、日常のランニング向けに設計されたデイリートレーナーとして、軽量さとクッション性を両立させているのが特徴だ。スタックハイトを2mm増やし、ドロップを5mmから8mmへ変更したことで、より標準的な業界基準に近づいた。一方で、重量が約1オンス増加した点は、軽さを重視するランナーにとって議論の的となっている。

レビューでは、Clifton 10のデザイン、素材、パフォーマンスを詳細に検証する。HOKAは、Bondiのような最大クッションモデルとSkyflowのような速さを重視したモデルとの間で、Cliftonを中間的な位置づけにシフトさせているようだ。ウェブサイト上の表記も「neutral」から「plush」へ変更され、より柔らかく快適な印象を強調している。実際に履いてみた感触では、Clifton 9と大きな違いを感じないが、長期使用での耐久性が鍵となる。全体として、このシューズはクッションを好むランナーに向け、日常のイージーランやウォーキングに適した選択肢を提供する。以下では、変更点や実走行の印象を基に、Clifton 10の強みと弱みを分析していく。

Cliftonシリーズの歴史

HOKAは2010年代に、Cliftonシリーズを通じて世界的なブレイクを果たした。このシューズは、大きくてかさばる外見ながら、驚くほど軽量で速い走りを実現する新しいコンセプトを提案した。初期のモデルからバージョンアップを繰り返し、Clifton 9が2023年にリリースされる頃には、世界で最も愛されるシューズラインの一つとなっていた。しかし、その後2年間の沈黙を経て、Clifton 10が登場した。この間、HOKAは他のラインを強化し、Bondiを最大クッション、Skyflowをスピード寄りに位置づけた。Cliftonはこれらの間で、バランスの取れたデイリートレーナーとして進化を遂げている。過去のモデルでは、軽さと快適さが人気を集めたが、耐久性の問題が指摘されることもあった。Clifton 10では、そうしたフィードバックを反映し、トゥボックスを広げたり、上部を強化したりする変更が加えられている。これにより、シリーズの伝統を保ちつつ、現代のランナーのニーズに応える形となった。

デザインの変更点

Clifton 10の最大の変更は、ドロップを5mmから8mmへ引き上げた点にある。これにより、業界標準に近づき、初心者や中級者にとって扱いやすくなった。また、スタックハイトを2mm増加させたことで、クッション性がさらに向上している。トゥボックスを広げたのも重要なアップデートで、過去のモデルでピンキートゥが擦れる問題を解決した。上部には新しいジャカードアッパーを採用し、タンがずれにくくなった。これらの変更により、全体の重量がClifton 9の約248gから278g（27cm、メンズ）へ増加した。これは、軽量性を重視するユーザーにとってはデメリットだが、クッションの強化と引き換えの妥協点と言える。形状はClifton 9と似ているため、手に取っただけでは違いが分かりにくいが、履いて走ることでその変化を実感できる。HOKAは、Cliftonをより「plush」なカテゴリへ移行させ、日常使いの快適さを優先した設計を採用している。

素材と技術

ミッドソールには、従来通りCMEVAフォームを使用し、HOKAのクラシックなメタロッカー技術を搭載している。この技術は、フォワードローリングを促進し、自然な推進力を生む。フォームはレスポンシブで、着地時の衝撃を吸収しながら、軽快な反発を提供する。アッパーのジャカード素材は、通気性を保ちつつ、足のフィット感を高めている。アウトソールは耐久性を考慮したラバー配置だが、全体として軽量さを維持するための工夫が見られる。Clifton 10は、最大クッションのBondi（約303g）とスピード寄りのSkyflow（約266g）の中間に位置づけられ、バランスの取れた素材選択が特徴だ。これにより、イージーランでの快適さと、時折のペースアップに対応できる柔軟性を実現している。ただし、フォームの経年劣化が早いという過去の懸念が残るため、長期的な素材の耐久性が今後の評価ポイントとなる。

パフォーマンスの実走感

Clifton 10を実際に履いて走ってみると、Clifton 9と似た快適なフィーリングが得られる。軽量でレスポンシブなフォームのおかげで、重さを感じさせず、速いペースにも対応可能だ。メタロッカー技術がフォワードモーションを助け、イージーラン中にストライドを伸ばしやすい。スタックハイトの増加により、着地が柔らかく、膝や足への負担が少ない。重量増加が懸念されたが、走行中はそれほど目立たず、全体としてバランスの良いデイリートレーナーとして機能する。ただし、初期の好印象が400～500kmで失われやすいという過去の傾向を考慮する必要がある。HOKAは、このモデルでクッションとスピードの両立を目指したが、軽さを最優先するランナーにはやや重く感じるかもしれない。全体のパフォーマンスは、日常のトレーニングに適しており、ウォーキングシューズとしても活用できる汎用性が高い。

比較分析

Clifton 10を他のデイリートレーナーと比較すると、その位置づけが明確になる。以下は、主な競合モデルとの比較表だ。

シューズ	重量 (27cm)	スタックハイト	特徴	弱点
HOKA Clifton 10	278g	42mm / 34mm	クッション性が高く、レスポンシブ	重量増加、耐久性の懸念
Brooks Ghost 17	286g	35mm / 25mm	耐久性が高く、安定した走り	クッションがやや硬め
ASICS Gel-Nimbus 27	305g	43.5mm / 35.5mm	最大クッション、衝撃吸収	重く、レスポンスが遅い
On Cloudmonster	275g	30mm / 24mm	軽量で反発力強い	地面の感触が強い

この表から、Clifton 10はクッションと軽さのバランスが優れているが、耐久性でBrooks Ghostに劣る可能性がある。ASICS Gel-Nimbusはクッション重視のユーザーに向き、On Cloudmonsterはミニマリスト寄りの選択肢となる。HOKAのライン内では、Bondi（303g、最大クッション）とSkyflow（266g、スピード重視）との差別化が図られている。

快適性の評価

Clifton 10の快適さは、シリーズの強みとして際立っている。広げられたトゥボックスにより、足の圧迫感が減少し、長時間の着用でもストレスを感じにくい。アッパーの素材が柔らかく、足を包み込むようなフィット感を提供する。クッションの柔らかさは、イージーランやウォーキングで特に効果を発揮し、日常のアクティビティに適している。過去のモデルで指摘されたタンのずれも改善され、全体の安定性が向上した。レスポンシブなフォームが、着地からトランジションまでの流れをスムーズにし、疲労を軽減する。ただし、幅がやや狭めなので、ワイドフィットのユーザーは異なる幅のオプションを試すことを推奨する。快適さを重視するランナーにとって、このシューズは日常の相棒として信頼できる存在だ。

耐久性と価値の考察

Cliftonシリーズの過去のモデルは、500～600kmで劣化しやすいという評判がある。Clifton 10も同様の懸念が残るが、素材の強化により改善の兆しが見られる。フォームのレスポンシブさが初期は優れているものの、長期使用でバランスを失う可能性があるため、定期的なチェックが必要だ。競合のBrooks GhostやASICS Gel-Nimbusは、1000km以上の耐久性を示す場合が多く、Cliftonの弱点として挙げられる。一方で、軽量さとクッションのバランスは価値が高く、デイリートレーナーとして十分な役割を果たす。HOKAは、このモデルで耐久性の向上を目指しているが、実際の使用データが蓄積されるまで様子を見るべきだろう。全体として、快適さを優先するユーザーには適しているが、耐久性を最重要視する場合は他の選択肢を検討したい。

結論

Clifton 10は、HOKAの伝統を継承しつつ、クッション性を強化したアップデートモデルとして、ランニングシューズ市場に新たな選択肢を提供する。ドロップの変更やトゥボックスの拡大は、ユーザーのフィードバックを反映した進化であり、日常のイージーランに適したバランスを実現している。一方で、重量増加と耐久性の懸念は、軽量性を求めるランナーにとって考慮点となる。比較表からもわかるように、BrooksやASICSのモデルと競合する中で、Cliftonは独自の「plush」な快適さを武器に差別化を図っている。将来的に、HOKAはさらに耐久性を向上させることで、シリーズの地位を固める可能性がある。このシューズは、クッションを好む中級者ランナーにおすすめだが、店舗での試着を推奨する。ランニング業界全体として、こうした進化は、ユーザーの多様なニーズに応える方向性を示唆している。

参考資料