トレイルランニングの分野で、日常のトレーニングからレース本番まで対応する高性能シューズが求められている中、ザ・ノース・フェイスのVECTIV Enduris 4は、長距離での快適さとパフォーマンスを両立したフラッグシップモデルとして注目を集めている。このシューズは、過酷なトレイル環境でランナーの足元を支え、推進力と安定性を提供する設計が特徴だ。レビューでは、ビルドクオリティから実際の走行感までを詳しく検証し、トレイルランナーにとっての価値を探る。自然の地形に適応しつつ、足への負担を最小限に抑える工夫が随所に施されており、ウルトラディスタンスのレースでも信頼できる一足と言えるだろう。
概要
ザ・ノース・フェイスのVECTIV Enduris 4は、トレイルランニングの日常トレーニングとレース向けに開発されたシューズで、高いパフォーマンスと長距離快適性を追求している。エンジニアードメッシュのアッパーからミッドソール、アウトソールまで、細部にわたる設計がランナーの体験を向上させる。ミッドソールにはドリームナイトロゲンTPUを採用し、クッション性と反発性を両立。アウトソールはサーフェスコントロールラバーで、4mmのラグがトレイルのグリップを確保する。全体として、安定した走行を支える構造が魅力だ。
- スペック:
- アッパー: エンジニアードデュアルラップメッシュ
- タン: ガセットタン
- プレート: 3D TPUプレート(推進力と横方向サポート)
- ミッドソール: ドリームナイトロゲンTPU
- アウトソール: サーフェスコントロールラバー、4mmラグ
- スタックハイト: ヒール32mm、トゥ24mm(ドロップ8mm)
- 重量: 27cm(US9)で287g(片足)
このスペックは、トレイルの多様な地形に対応するためのバランスを考慮したものだ。たとえば、スタックハイトの高さは長時間の走行で足への衝撃を吸収し、ドロップの設定は自然な足運びを促す。全体の設計は、日常のミドルディスタンスからウルトラマラソンまでをカバーする汎用性を備えている。
ビルドクオリティ
VECTIV Enduris 4のビルドクオリティは、素材の選択と組み立ての精密さが際立つ。アッパー部分はエンジニアードメッシュを二重構造で採用し、内側にライニングを施すことで耐久性を高めている。この構造は、岩場や枝との接触による損傷を防ぎ、シューズの寿命を延ばす効果がある。実際にトレイルで使用すると、メッシュの柔軟性が足の動きに追従し、擦れや違和感を生じにくい。タンはガセットタイプで、シューズ内部への異物侵入を防ぎつつ、全体のフィット感を向上させる工夫が施されている。
ヒール部分には適度なパッドと剛性を備え、踵のロックインを確実にする。これにより、長時間の走行でも踵のずれが少なく、安定したホールドを実現する。ミッドソールに組み込まれた3D TPUプレートは、推進力を助けると同時に、横方向の安定性を提供。トレイルの不規則な地形でねじれを防ぎ、ランナーのバランスを維持する役割を果たす。アウトソールはサーフェスコントロールラバーで、耐摩耗性が高く、早期の劣化が見られない。全体として、ザ・ノース・フェイスのシューズは、デザインの段階から実用性を重視した作り込みが感じられ、競合他社と比較しても上質な仕上がりだ。このビルドは、単なる機能性だけでなく、ランナーがシューズを信頼して集中できる基盤を提供している。
快適性
快適性という観点から、VECTIV Enduris 4は長距離トレイルに適した設計が光る。アッパーの二重構造は、通気性を若干犠牲にするものの、内側のライニングが足全体を優しく包み込み、摩擦によるホットスポットや水ぶくれを防ぐ。ミッドソールはスーパークリティカルナイトロゲンインフューズドTPUで、衝撃吸収性が高く、柔らかすぎないクッションが疲労を軽減する。ダウンヒルではこのミッドソールが衝撃を効果的に分散し、足への負担を最小限に抑える。
トゥボックスの形状は、やや先細りだが、十分なスペースを確保しており、中足部からヒールにかけてのフィットはセキュアだ。レースはテクスチャード加工で、結び目が解けにくく、走行中の調整を減らす。全体の快適さは、ウルトラディスタンスのレースで特に実感され、シューズが足の一部のように感じられる。トレイルの起伏が多い環境でも、プレートのロッカー形状がスムーズなトランジションを促し、疲労蓄積を遅らせる。この快適性は、日常トレーニングのモチベーションを維持する要因となり、ランナーのパフォーマンスを間接的に支えている。
パフォーマンス
パフォーマンス面では、VECTIV Enduris 4が真価を発揮する。ミッドソールのドリームナイトロゲンTPUは、衝撃吸収と反発性のバランスが優れており、足を置くたびにエネルギーを返してくれる感覚がある。このバウンシーなフィールは、トレイルのアップヒルで推進力を助け、ダウンヒルでは安定した着地を可能にする。3D TPUプレートがロッカー形状を維持し、前方への推進をスムーズに導くため、長距離でもペースを保ちやすい。
アッパーは足の動きに適応し、横揺れや前後のずれを防ぐ。アウトソールの4mmラグは、土や岩場で優れたグリップを発揮し、自信を持ってステップを踏める。全体の重量感は若干あるものの、安定性を優先した設計がトレイルの要求に応じる。日常のトレーニングからウルトラレースまで、このシューズはランナーを励ますような走行感を提供し、タスクに集中させる。パフォーマンスの鍵は、ミッドソールの活発さとプレートのサポートが融合した点にあり、トレイルランニングの楽しさを高める。
比較
VECTIV Enduris 4を他のトレイルシューズと比較すると、そのバランスの良さが際立つ。ナイキのWildhorse 10は軽量だが、ミッドソールのクッション性が劣り、長距離での快適さに欠ける。Topo AthleticのMountain Racer 4はグリップが強いものの、ミッドソールの反発がEnduris 4ほど活発ではない。VJのMaxx 2は耐久性が高いが、アッパーの素材が硬めでフィット感が劣る。Enduris 4はこれらを上回るミッドソールとビルドクオリティで、日常トレーニング向きだ。
| モデル | 特徴 | 弱点 |
|---|---|---|
| VECTIV Enduris 4 | 優れたミッドソール反発と安定性、長距離快適 | 若干の重量感 |
| Nike Wildhorse 10 | 軽量で機敏 | クッション不足 |
| Topo Athletic Mountain Racer 4 | 強いグリップと改善された耐久 | 反発性の物足りなさ |
| VJ Maxx 2 | 高耐久アッパー | 硬めのフィット |
この比較から、Enduris 4は総合力で優位を保ち、トレイルの多様なニーズに対応する。
良い点
- ミッドソールのクッションと反発がバランスよく、長距離で疲労を軽減。
- アッパーの耐久性が高く、トレイルの過酷な環境に耐える。
- 3D TPUプレートが推進力と安定を提供し、走行をスムーズに。
- アウトソールのグリップが優れ、土や岩場で信頼性が高い。
- 全体のビルドクオリティが上質で、長寿命を期待できる。
悪い点
- 二重構造のアッパーで通気性がやや劣る。
- トゥボックスの形状が先細りで、幅広の足に窮屈さを感じる可能性。
- 若干のバルク感があり、軽量さを求めるレースでは不向き。
改善点
- 通気性を向上させるために、アッパーの構造を単層に近づける。
- トゥボックスの形状をよりアナトミカルにし、足の自然な広がりを考慮。
- 重量を軽減するための素材最適化を図り、機敏性を高める。
結論
VECTIV Enduris 4は、トレイルランニングの日常からレースまでをカバーする信頼できるシューズとして、ミッドソールの活発さと安定性のバランスが際立つ。長距離での快適さとパフォーマンスが鍵となり、ランナーのモチベーションを維持する一足だ。トレイルシューズの進化を象徴し、業界全体で素材革新が進む中、このモデルは持続可能な快適性を提案している。将来的に、軽量化と通気性の向上を期待しつつ、現時点でバランスの取れた選択肢としておすすめできる。トレイルの多様な挑戦に挑むランナーにとって、思索を促す存在となるだろう。
参考資料