トレイルランニングの分野で、軽量さとパフォーマンスを追求したシューズが注目を集めている。ノースフェイスのサミット VECTIV Sky 2は、VECTIVラインの中で最も軽いトレイルレーシングシューズとして設計されており、カーボンプレートと先進的なミッドソールを組み合わせ、さまざまな地形での高速走行を可能にする。本レビューでは、シューズの構造から快適性、パフォーマンスまでを詳細に分析し、トレイルランナーにとっての実際の価値を探る。初期の使用で発生した問題点も含め、客観的な視点からその強みと課題を明らかにする。
概要
サミット VECTIV Sky 2は、ノースフェイスが提供する高性能トレイルシューズの最新モデルだ。このシューズは、軽量化を極限まで追求しつつ、推進力と安定性を両立させることを目指している。全体の設計は、レーシング用途に特化しており、トレーニングからレースまで幅広いシーンで活用可能だ。フルレングスのカーボンプレートが推進力を生み出し、ミッドソールは窒素注入のTPU素材を採用してレスポンシブなフィーリングを実現する。アウトソールは高いトラクションを確保し、さまざまな地形に対応する。
- スペック:
- 重量: 238g (27cm, US9)
- スタックハイト: ヒール30mm / トゥ24mm
- ドロップ: 6mm
- アウトソールラグ: 4mm
- アッパー: エンジニアードメッシュ
- ミッドソール: Dream Nitrogen TPU
- プレート: VECTIV 3.0 カーボンファイバー (フォークドフォアフット&ヒール)
このスペックからわかるように、シューズは低スタックながらも十分なクッション性を備え、地面との接地感を重視した設計となっている。トレイルでの敏捷性を高めるために、余計な要素を排除したミニマリスト的なアプローチが取られている。
アッパーの構造
アッパーはエンジニアードメッシュ素材を基調とし、耐久性と通気性を兼ね備えている。トゥエリア周辺に追加の補強が施され、岩場や根っ子が多いトレイルでの耐摩耗性を高めている。タンはガセットタイプで、薄めの素材ながら足にフィットし、異物の侵入を防ぐ役割を果たす。オーバーレイは最小限に抑えられ、アイレット周りにのみ配置されており、シューレースの耐久性を支えている。
シューレース自体はテクスチャード素材を使用し、締め付け時にしっかりと固定され、走行中に緩む心配が少ない。ヒールエリアはパディングが控えめだが、柔らかい素材が使用されており、アキレス腱への負担を軽減する。ヒールフレアは低めに設計されているため、足首の動きを妨げず、全体として軽量で妨げのないフィットを可能にしている。この構造は、トレイルランニングのダイナミックな動きに適応し、足を自然に包み込む感覚を提供する。全体のビルドクオリティは高く、素材の選択と縫製の精度が、長期使用を想定した信頼性を示唆している。
快適性とフィット
快適性については、初期の使用でいくつかの課題が浮上した。標準のインソールはTPUベースの素材で、弾力性はあるものの、足裏の特定のポイントで摩擦が生じやすい。具体的には、フォアフットエリア、特に大趾の後ろ側でブリスターが発生するケースが報告されている。これはカーボンプレートの配置とインソールの薄さが原因と考えられ、11km程度のランで不快感を伴うことがあった。
しかし、インソールを交換することでこの問題は大幅に改善された。例えば、Innov-8のBoomerangインソールのような厚めのTPUビードタイプに置き換えると、クッション性が向上し、摩擦が軽減される。交換後の快適性は良好で、低スタックの設計ながらも中程度の柔らかさを感じられる。足首周りのフィットは低めのカラーが特徴で、硬すぎず柔らかすぎず、安定したホールドを提供する。全体として、幅は狭めでレーシング向きのフォルムフィットを実現しており、ミッドフットでのロックダウンが自然だ。ブリスター問題を解決すれば、長時間のランでも疲労を最小限に抑えられるが、標準状態での快適性は改善の余地がある。
ミッドソールとプレート
ミッドソールの中心は、Dream Nitrogen TPU素材で、窒素注入により高いレスポンシブネスを実現している。このフォームは中程度の柔らかさを持ち、地面からのフィードバックを明確に伝えつつ、推進力を生む。フルレングスのVECTIV 3.0カーボンファイバープレートは、フォアフットとヒールでフォーク状に分岐し、柔軟性を保ちながら安定性を高めている。このプレートは、トレイルの凹凸に適応しつつ、ペップ感を加える役割を果たす。
低スタック（ヒール30mm）の設計は、地面に近い感覚を重視し、敏捷性を向上させる。従来の高スタックシューズとは異なり、軽快さとレスポンスを優先したアプローチが取られており、疲労蓄積を抑えつつ高速走行をサポートする。耐久性も高く、素材の劣化が少なく、長期間の使用に耐えうる。全体として、ミッドソールとプレートの組み合わせは、トレイルレーシングの核心を体現しており、走る喜びを増幅させる要素となっている。
アウトソール
アウトソールはSurface Controlラバー素材を採用し、4mmの方向性ラグが配置されている。この設計は、岩場、ルーツ、土壌など多様な地形でのトラクションを確保し、Vibram Megagripに匹敵するグリップ力を発揮する。ラグの配置はフォアフットを中心に広がり、安定性を高めつつ、地面との接触感を向上させる。
耐久性も優れており、摩耗が少なく、さまざまなコンディションで信頼できる。低スタックの影響で、地面の感触が直接伝わり、適応力が向上する。グリップの自信が走行の安定性を支え、テクニカルなトレイルでも安心してペースを上げられる。このアウトソールは、シューズ全体のパフォーマンスを底支えする重要な要素だ。
パフォーマンス
パフォーマンス面では、このシューズは軽量さ（238g）とレスポンシブネスが際立つ。走行中、足の回転を促す感覚があり、速いペースでのランを奨励する。上り坂やテクニカルセクションで、プレートの推進力が効果を発揮し、安定した接地感を提供する。インソール交換後、ブリスターの問題が解消されると、全体のフィーリングが向上し、喜びを感じる走りが可能になる。
低スタックの設計は、地面とのつながりを強め、適応性を高める。ヒールでのスリップがなく、ミッドフットのホールドが確実だ。高速走行時ほど報われるレスポンスがあり、トレーニングやレースでモチベーションを維持する。全体として、潜在能力が高く、ブリスター問題をクリアすれば、50km程度のレースでも活躍するだろう。
- 特徴:
- 軽量で高速回転を促す設計
- レスポンシブなミッドソールとプレート
- 多地形対応の高いグリップ
良い点と
悪い点
良い点:
- 軽量さと推進力のバランスが優れ、速いペースを維持しやすい
- 通気性が高く、耐久性の高いアッパー素材
- グリップ力の強いアウトソールで、テクニカルトレイルに自信を持てる
- レスポンシブなミッドソールが走る喜びを提供
- 低スタックながら安定したフィット
悪い点:
-
標準インソールでブリスターが発生しやすい
-
幅が狭めで、ワイドフィットの足には不向き
-
初期の快適性が低く、調整が必要
-
改善点:
- インソールのクッション性を向上させる
- ブリスター防止のための素材調整
- 幅のバリエーションを増やす
比較：アドイダス テレックス スピード ウルトラとの違い
サミット VECTIV Sky 2は、過去の人気モデルであるアドイダス テレックス スピード ウルトラを彷彿とさせるが、パフォーマンスをさらに向上させた印象だ。以下に両モデルの比較を示す。
| 項目 | サミット VECTIV Sky 2 | テレックス スピード ウルトラ |
|---|---|---|
| 重量 | 238g (27cm, US9) | 255g (27cm, US9) |
| スタックハイト | ヒール30mm / トゥ24mm | ヒール33mm / トゥ25mm |
| ドロップ | 6mm | 8mm |
| 主な技術 | VECTIV 3.0 カーボンプレート、Dream Nitrogen TPU | Boost/Lightstrike ミッドソール、エネルギーロッド |
| 特徴 | 軽量レスポンシブ、テクニカルグリップ | クッション性高く、長距離向き |
| 弱点 | ブリスター発生の可能性 | 耐久性のばらつき |
この比較から、Sky 2はより軽量で低スタックのため、敏捷性を重視した設計がわかる。一方、テレックスはクッションが豊富で、長距離の疲労軽減に優位だ。どちらもレーシング向きだが、使用シーンにより選択が変わる。
結論
サミット VECTIV Sky 2は、軽量さとパフォーマンスの融合で、トレイルレーシングの新たな基準を提示する。ブリスター問題をインソール交換で解決すれば、優れたレスポンシブネスとグリップが真価を発揮し、短中距離レースに適した選択肢となる。主要な takeaway は、技術革新がランナーの体験を向上させる一方で、個々のフィット調整が不可欠だということだ。バランスの取れた推薦として、テクニカルトレイルを好むランナーに推奨するが、試着を前提とする。業界全体では、このような軽量モデルが増え、トレイルランニングの多様性を広げていくであろう。ランナーは自身のニーズに合った進化を追い求め、持続可能な走りを目指すべきだ。
参考資料
