ASICS Sonicblastレビュー:新世代テンポシューズの真価 🏃‍♂️👟

ASICSのBlastファミリーに新たに加わったSonicblastは、パフォーマンス指向のトレーナーとして注目を集めている。このシューズは、Nova Blast 5の改善を目指して開発され、短距離から中距離の速いペースでのトレーニングやレースを想定している。レビュアーの視点から、革新的なミッドソール技術を活かしつつ、日常のランニングとの相性を検証する。全体として、特定の用途に特化した一足として位置づけられるが、その乗り心地やフィット感がユーザーの好みを分ける可能性がある。

:light_bulb: 概要

ASICS Sonicblastは、Blastシリーズの最新モデルとして、Mega Blastとともに発表された。主なアップデートは、新たなミッドソールフォームであるFF Turbo Squaredの採用だ。このATPUベースのフォームは、従来のPAフォームに比べて同等の反発性を保ちつつ、耐久性を高めている。Sonicblastは、デュアルミッドソール構造を特徴とし、上層にFF Turbo Squared、下層にNova Blast 5と同じFF Blast Maxを組み合わせ、間にPEBA製のAstro Plateを挟んでいる。この構成は、Nike Zoomfly 6やサッカニー Endorphin Speed 5のようなスーパートレーナーに匹敵する性能を目指している。全体のデザインは、レース指向のフィットを重視し、速いペースでの安定性を提供する一方で、日常使いの汎用性に課題を残す形となっている。開発の背景には、Nova Blast 5の進化を求める声があり、よりパフォーマンス寄りのシューズとして位置づけられている。

  • スペック
    • ヒールスタック: 46 mm
    • フォアフットスタック: 38 mm
    • ドロップ: 8 mm
    • 重量: 256 g (27 cm / US9)
    • サーフェス: ロード
    • サポート: ニュートラル
    • クッション: 高

:building_construction: ミッドソール技術

Sonicblastの核心は、デュアルミッドソールの革新にある。上層のFF Turbo Squaredは、弾力性に優れたATPUフォームで、Mega Blastで好評を博した素材の進化版だ。これにより、レスポンシブな反発を実現しつつ、長期的な耐久性を確保している。下層のFF Blast Maxは、柔軟性を加え、全体のクッション性を高める役割を果たす。両者の間に配置されたAstro Plateは、PEBA素材を使用したもので、カーボンファイバー製ではないため、柔軟な推進力を提供する。このプレートは、シューズの安定性を向上させ、速いペースでのトランジションをスムーズにする。従来のBlastシリーズと比較すると、この組み合わせはより堅牢な乗り心地を生み出し、Superblast 2のようなフィーリングを想起させるが、独自のバランスを確立している。技術的な観点から、この構造はエネルギーリターンを最適化し、トレーニングの効率を高める可能性を秘めているが、プレートの影響で全体がやや硬めに感じられる場合がある。

  • 特徴
    • FF Turbo Squaredフォーム: 高い反発性と耐久性を兼備。
    • FF Blast Max: クッション性を補完し、快適さを向上。
    • Astro Plate: PEBA製で、安定した推進力を提供。
    • デュアル構造: 異なるフォームの組み合わせによる多層クッション。

:running_shoe: デザインとフィット

Sonicblastのデザインは、レース指向のシルエットを採用し、Mega Blastに似た狭めのプロファイルを特徴とする。トゥボックスは十分なスペースを確保し、体積的にも問題なく、従来のASICSパフォーマンスシューズで指摘された低い天井の問題を解消している。タンは最小限のパッドで快適さを保ち、ミッドフットのホールドも標準的なレースで良好だ。ただし、アンクルカラー部分に課題があり、僅かなパディング不足が原因でアキレス腱の擦れを引き起こす可能性がある。この点は、Mega Blastと比較して顕著で、形状の尖ったデザインが影響しているかもしれない。全体の通気性は優れており、暑い環境での使用にも適している。フィット感は、標準サイズで問題なく、幅広い足型に対応するが、狭めの設計ゆえにワイドフィットを好むユーザーには調整が必要だ。このデザインは、速い動きを重視した結果生まれたもので、日常のウォーキングよりはトレーニングセッションに適した構造となっている。

:person_running: ランニング体験

Sonicblastを履いた瞬間、足元に感じるのは顕著な硬さだ。Superblast 2を思わせるこのフィーリングは、Mega Blastのような即時の快適さとは異なり、30〜40 kmの慣らし期間を要する。クッションは46 mmのヒールスタックで十分だが、Blastシリーズ特有の柔らかい沈み込みとは一線を画す。Astro Plateの影響で、全体が硬く安定した乗り心地となり、低速のイージーランでは不満を感じやすい。ゆっくりとしたペースでは、より柔軟なシューズを求める声が上がるだろう。一方、速いペースに移行すると真価を発揮する。10 kmからハーフマラソンのテンポランで、フォアフットのロッカーが推進力を助け、スムーズなトランジションを実現する。推進力は前方向に特化し、Mega Blastのような上向きのバウンスではなく、安定したフォワードモーションを提供する。全体として、楽しい乗り心地というよりは、コントロールされた安定性が魅力で、特定のトレーニングに特化した体験となる。プレートはエネルギーリターンを安定させ、安定性を高めるが、活発なバウンスを求めるユーザーには物足りないかもしれない。

  • メリット (:+1: 良い点)

    • 速いペースでの安定性が高く、テンポトレーニングに最適。
    • 通気性の良いアッパーで、長時間の使用でも快適。
    • デュアルミッドソールが耐久性を向上させ、長期使用に適する。
    • フォアフットのロッカーがスムーズな推進力を提供。
  • デメリット (:-1: 悪い点)

    • 低速ランニングでは硬さが目立ち、快適さに欠ける。
    • アンクルカラーのパディング不足で擦れが発生しやすい。
    • 慣らし期間が必要で、即戦力になりにくい。
    • 汎用性が低く、日常トレーニングの主力には不向き。

:balance_scale: 比較分析

Sonicblastは、Blastファミリー内でMega Blastと対比されることが多い。Mega Blastは、完全なFF Turbo Squaredスラブを採用し、幅広いペースに対応する汎用性を備えている。一方、Sonicblastはプレートとデュアルフォームで特化した性能を発揮するが、柔軟性に欠ける。Nike Zoomfly 6は、似たテンポ指向ながら、低速でも対応しやすい点で優位だ。サッカニー Endorphin Speed 5も、軽量さとレスポンシブネスで競合する。Magic Speed 4は、よりアグレッシブな軽量設計でレース寄りだが、Sonicblastはトレーニングのニッチを狙う。全体として、Sonicblastは専門性が高いが、Mega Blastの多用途性に劣る面がある。この比較から、ユーザーのトレーニングスタイルによって選択が変わるだろう。

項目 ASICS Sonicblast ASICS Megablast
重量 256 g (27 cm / US9) 230 g (27 cm / US9)
スタックハイト 46 mm (ヒール) / 38 mm (フォアフット) 45 mm (ヒール) / 37 mm (フォアフット)
ドロップ 8 mm 8 mm
主な技術 FF Turbo Squared + FF Blast Max + Astro Plate (PEBA) FF Turbo Squared (フルスラブ)
特徴 硬めの安定した乗り心地、テンポラン向き バウンシーで楽しい乗り心地、多用途
弱点 低速不向き、擦れの可能性 専門性が低い、安定性で劣る

:wrench: 改善提案

Sonicblastの潜在力を最大化するため、いくつかの改善点が考えられる。アンクルカラーのパディングを増やし、形状を丸みを帯びたものに変更すれば、擦れの問題を軽減できる。ミッドソールの硬さを調整し、慣らし期間を短縮する工夫も有効だ。プレートの影響を柔軟にコントロールし、低速ペースでの快適さを向上させれば、汎用性が広がるだろう。また、アッパーの素材をさらに通気性重視に進化させ、さまざまな気候対応を強化する。全体として、FF Turbo Squaredの魅力を活かしつつ、プレートとフォームのバランスを再考すれば、次世代モデルでより幅広いユーザーにアピール可能だ。

  • 改善点
    • アンクルカラーのパディングを増強し、擦れを防ぐ。
    • ミッドソールの初期硬さを軽減し、慣らしを容易に。
    • プレートの柔軟性を高め、低速対応を改善。
    • アッパーの形状を調整し、フィットを多様化。

:bar_chart: 競合モデルとの位置づけ

Sonicblastは、市場のスーパートレーナー群の中で独自のポジションを確立しようとしている。Nike Zoomfly 6は、価格帯を考慮せずとも、汎用性の高さで日常使いに適している。一方、サッカニー Endorphin Speed 5は、軽量さとスピード感でレース寄りの魅力を発揮する。ASICS内では、Magic Speed 4がより軽快でアグレッシブだが、Sonicblastはテンポトレーニングの橋渡し役として機能する。Nova Blast 5やSuperblast 2との比較では、プレートの追加が安定性を高める一方で、純粋なバウンスを抑えている。この位置づけから、Sonicblastは回転率の高いシューズローテーションのサブとして有効だが、単独での主力には限界がある。業界全体では、フォームとプレートの組み合わせがトレンドとなっており、ASICSの試みが今後の方向性を示唆する。

Sonicblastは、特定のペースに特化したシューズとして価値があるが、Blastシリーズの多用途性を求めるユーザーにはMega Blastをおすすめする。全体のバランスを考慮すると、テンポランを重視するランナーに向く一足だ。将来的には、こうしたニッチモデルがランニングシューズの多様化を促進し、個別最適化の時代を加速させるだろう。


参考資料