ミズノの最新デイリーランニングシューズ、ネオゼン。軽量ボディに高反発ミッドソールを搭載し、日常のトレーニングを快適に支える一足だ。この記事では、ブランドの歴史から技術の詳細、実際の走行感までを検証し、ランナーが求めるバランスを分析する。ミズノの職人精神が息づく設計が、どのように現代のランニングシーンに適応しているかを探る。
ミズノのブランドヒストリー
ミズノは、アシックス、デサント、ヨネックスとともに日本を代表するスポーツ用品ブランドとして知られる。1906年、ミズノ Rihachi と Rizo の兄弟が大阪でスポーツ用品店を開業したのが始まりだ。兄弟は野球を愛し、初期はグローブ、バット、ボール、ユニフォームの製造販売に注力した。1923年にミズノスポーツ社を設立後、スキー用品やゴルフクラブの生産に拡大。世界初の圧縮バットを開発し、1947年にはテニスラケット、1965年には世界最大級のゴルフ用品工場を建設した。1985年には軽量サッカースパイクのモレリアを発売し、1991年にはカール・ルイスがミズノのスパイクで世界記録を樹立。ランニング分野でも早期から投資を続け、1997年にウェーブライダーをリリース。現在、ウェーブライダー28まで進化している。この歴史は、単なるスポーツ用品の変遷ではなく、技術の継承を象徴する。たとえば、野球グローブの職人である津端信義氏から岸本昭氏へ、そして鈴木一朗選手への技術伝承のように、ミズノは職人精神を重視。こうした精神が、ランニングシューズの開発にも反映され、ネオゼンというモデルを生み出した。動画で紹介された鈴木一朗と職人の対談は、ミズノのクラフトマンシップを象徴し、ランニング製品への好奇心を喚起する。
ミッドソール技術の進化
ミズノの代表的なミッドソール素材は、ミズノエナジーだ。約4年前に開発されたTPUベースの素材で、エネルギーロスを最小限に抑える特徴を持つ。ネオゼンでは、この次世代版であるミズノエナジーネクストを採用。超臨界発泡技術により、TPUに窒素を注入した構造が鍵となる。これにより、柔らかさと高反発力を両立し、耐久性も向上。ミッドソールの感触は、弾力性が高く、厚みのあるクッションが足を包むように感じられる。こうした素材の進化は、ミズノの長年の研究開発の賜物で、ランニング時のエネルギー効率を高める。たとえば、日常のジョギングからペースアップまで対応可能で、足への負担を軽減する設計が際立つ。ミズノは、素材の微細な調整を通じて、ランナーの自然な動きをサポートするアプローチを取っている。
全体デザインと構造の工夫
ネオゼンは、デイリーランニングをターゲットに設計されたモデルで、広いベースが安定性を提供する。前足部から中足部、後足部まで、ベース面積を広げ、安定的な着地を実現。ミッドソールの高さはヒール40mm、フォアフット34mmでドロップは6mmと、厚底ながら低ドロップで自然な走りを促す。 スムーススピードアシストと呼ばれるジオメトリは、ヒールとフォアフットの最高点を結ぶ線と地面の角度を4度に調整。これにより、静止時やトゥオフ時の快適さが向上し、エネルギー効率を高める。従来のウェーブライダーとは異なり、ネオゼンはデイリー用途に特化。アウトソールは柔軟なラバーで覆われ、耐久性を保ちつつミッドソールの反発を増幅。こうした構造は、ミズノのランニング哲学を体現し、長距離でも疲労を抑える。
アッパーの特徴と素材
ネオゼンの最大の特徴は、一体型ニットアッパーだ。アルファフライ3のようなニット構造をデイリーモデルに採用するのは珍しく、通気性と伸縮性を両立。足全体をソックスのように包み込むが、着脱のしにくさが課題となる場合がある。しかし、ミズノはカラーの伸縮性を高め、復元力も確保。ヒールタブを高く設計し、着用時の利便性を向上させた。ヒールカウンターには補強材が入り、形状を維持。アキレス腱周りのソフトなニットがロックダウンを強化し、トゥボックスの空間もゆとりがある。東洋人の足型に合わせた設計で、足幅の広いランナーにも適応。内側の薄いTPU補強材（0.3mm厚）は、フィットを損なわず耐久性を加える。こうしたディテールは、ミズノの職人精神が反映された部分で、全体として快適なフィットを追求している。
フィット感と快適性の評価
ネオゼンの着用感は、ニットアッパーの柔軟さが際立つ。足首周りのストレッチが優れ、複雑な骨格にもフィット。ヒールタブの高さとソフトなカラーが、足首を優しく固定。トゥボックス内の空間は余裕があり、屈曲時も圧迫感がない。静止時の安定性が高く、体重配分が自然。インソール下にパッドのような素材を追加し、足底のクッションを強化。これにより、着地時の柔らかさと歩行時の快適さが向上。多くのニットモデルが着脱の不便さを抱える中、ネオゼンはバランスが良い。走行後のカフェタイムでも脱ぎたくないほど快適で、ランニング後のリラクゼーションにも寄与。ミズノの設計は、アジア人の足型を考慮し、全体的な一体感を提供する。
スペック詳細
- 重量: 27cm（US9）基準で239g。デイリーランニングシューズとして軽量クラスに属する。
- スタックハイト: ヒール40mm、フォアフット34mm。
- ドロップ: 6mm。
- 主な技術: ミズノエナジーネクスト（窒素注入TPU）、スムーススピードアシストジオメトリ、一体型ニットアッパー。
- アウトソール: 柔軟なラバーで耐久性と反発を両立。
- 特徴: 広いベースで安定性が高く、通気性に優れたニット構造。
良い点
- 軽量で反発力が高く、ペースアップ時の負担が少ない。
- ニットアッパーのフィット感が優秀で、長時間着用しても快適。
- 耐久性のある素材が日常トレーニングに適応。
- 東洋人向けの足型設計で、幅広いランナーにフィット。
- ジオメトリの調整により、自然な発進が可能。
悪い点
- ニットアッパーの着脱がやや手間取る場合がある。
- 安定性を求めるランナーには、柔らかさが不安定に感じられる可能性。
- 高速走行時、サポート不足が目立つ。
ネオビスタとの比較
ネオゼンとネオビスタは、ミズノのネオシリーズとして共通点が多いが、用途で差別化されている。ネオビスタはより厚底で、ネオゼンより反発重視。以下に比較をまとめる。
| 項目 | ネオゼン | ネオビスタ |
|---|---|---|
| 重量 | 239g (27cm/US9) | 266g (27cm/US9) |
| スタックハイト | ヒール40mm / フォアフット34mm | ヒール44.5mm / フォアフット36.5mm |
| ドロップ | 6mm | 8mm |
| 主な技術 | ミズノエナジーネクスト、一体ニット | ミズノエナジーネクスト、プレート搭載 |
| 特徴 | 軽量でデイリー向き、柔らかいクッション | 高スタックで長距離向き、強い反発 |
| 弱点 | 着脱のしにくさ | フィットがタイトで圧迫感あり |
ネオゼンは軽さと快適さを優先し、ネオビスタはスタックの高さでクッションを強調。着用感では、ネオゼンがゆとりがあり、ネオビスタがタイト。ジオメトリの角度もネオゼンが4度、ネオビスタが5度で、ネオゼンの方が自然なロールリングを実現。 アシックスのノバブラスト5（重量255g、27cm/US9基準）と比較すると、ネオゼンはより軽量で、反発の質が似つつ低ドロップが差別化要因だ。
走行性能のレビュー
ネオゼンの走行感は、軽量さが鍵となる。10kmのテストランで、ペースを5分40秒/kmから徐々に4分20秒/kmまで上げたが、精神的・身体的な負担が少ない。アッパーの一体感がシューズと足の融合を生み、クッションの柔らかさが着地をソフトに。ミズノエナジーネクストの反発は、ペースアップ時に顕著で、ナイトロフォームや類似素材に近い。アウトソールの柔軟さがミッドソールのポテンシャルを引き出し、ロールリングがスムーズ。高速域でもアッパーが足を固定し、安定した発進が可能。トレーニング用途として上位モデルに匹敵する反発力を持ち、日常からスピード練習まで対応。走行後の快適さも高く、ミズノの設計がランナーのモチベーションを維持する。
ミズノのネオゼンは、軽量と反発のバランスが優れたデイリーランナーとしておすすめだ。職人精神が宿る技術は、ランニングの未来を照らす。業界全体で素材革新が進む中、ミズノのような伝統と革新の融合が、多様なランナーのニーズに応える鍵となるだろう。
参考資料
