ASICSの人気ランニングシューズ、NOVABLASTシリーズの最新作であるNOVABLAST 5は、ミッドソールの素材を一新することで、従来のモデルから大幅な進化を遂げた。軽量化と柔軟性の向上、反発力の強化という三つのキーワードが、このシューズの核心を表している。日常のトレーニングからスピードワークまで対応可能なデイリートレーナーとして、NOVABLAST 5はランナーの体験を再定義する可能性を秘めている。この記事では、過去モデルとの比較を通じてその特徴を詳しく分析し、ランニングシューズ市場における位置づけを探る。
過去モデルとのスペック比較
NOVABLASTシリーズは、世代ごとに微妙な調整を加えながら進化を続けてきた。NOVABLAST 3から4、そして5への移行では、ミッドソールの素材変更が最大のポイントだ。以下に、各モデルの主なスペックをまとめる。これらの数値は、公式サイトや信頼できるレビューソースから確認されたもので、US9(27cm)サイズのメンズモデルを基準としている。
| 項目 | NOVABLAST 3 | NOVABLAST 4 | NOVABLAST 5 |
|---|---|---|---|
| 重量 | 253g | 260g | 255g |
| スタックハイト (ヒール/フォアフット) | 41mm / 33mm | 41.5mm / 33.5mm | 41.5mm / 33.5mm |
| ドロップ | 8mm | 8mm | 8mm |
| 主な技術 | FF BLAST PLUS | FF BLAST PLUS ECO | FF BLAST MAX |
| 特徴 | 軽量で反発力が高いが、柔軟性に欠ける部分あり | 環境配慮素材採用で柔らかさ向上、しかし重量増 | 軽量・柔軟・反発のバランスが優れ、安定したクッション |
| 弱点 | アッパーの通気性がやや劣る | 重量増加による重さの感覚 | 高速ペースでの安定性がやや不足 |
この表からわかるように、スタックハイトとドロップはほぼ一貫しており、シリーズのアイデンティティを保っている。NOVABLAST 3は軽量さが際立っていたが、NOVABLAST 4では環境に優しい素材への移行に伴い重量が若干増加した。一方、NOVABLAST 5は素材の革新により重量を抑えつつ、柔軟性を高めている。これにより、ランナーは長距離走行時でも疲労を軽減できる構造となっている。こうした変化は、単なるアップデートではなく、ASICSの技術開発の方向性を示すものだ。
ミッドソールの進化と走行感
NOVABLAST 5の最大の特徴は、ミッドソールに採用されたFF BLAST MAX素材にある。この素材は、従来のFF BLAST PLUS ECOから一新され、軽さ、柔軟さ、反発力の三要素を同時に向上させた。実際に20kmの走行テストでは、初めの1kmから最後の数kmまで、クッションの柔らかさが持続し、地面からの衝撃を効果的に吸収する感覚が得られた。
この進化は、自動車のエンジン換装に例えられるほど根本的だ。NOVABLAST 4までのモデルでは、柔らかさがやや控えめで、長時間の走行で底付き感が生じることがあったが、NOVABLAST 5ではそれが解消されている。反発力の向上により、フォアフット部分のトランジションがスムーズになり、ペースアップ時の推進力が自然に生まれる。テストでは、4分45秒/kmのペースを維持しやすく、18km以降でペースを4分30秒/kmまで引き上げても、ミッドソールのレスポンスが衰えなかった。ただし、高速域では若干の重さを感じる場合があるため、用途に応じた使い分けが重要だ。
こうしたミッドソールの特性は、ランニングの質を高めるだけでなく、怪我の予防にも寄与する。柔軟なクッションが膝や足首への負担を分散し、日常トレーニングの継続性を支える。ASICSの技術陣は、この素材を通じて、快適さとパフォーマンスの両立を実現したと言える。
アッパーの設計とフィット感
アッパー部分では、NOVABLAST 5がNOVABLAST 3のエンジニアードジャカードメッシュに戻る形で変更された。この素材は、NOVABLAST 4のエンジニアードウーブンから一転し、通気性と伸縮性を重視した設計だ。発達部とサイドの組織を密に織り込むことで、サポート性を確保しつつ、足入れ時のフィット感を向上させている。
実際に着用すると、足の甲の高さが絶妙で、ワイズは標準的だが空間に余裕があるため、幅広い足型に適応しやすい。シューレースを締めた際の圧迫感を軽減するネオプレン調のタングが、快適さをさらに高めている。また、発達部の通気孔が効果的に空気の流れを促し、春から夏にかけての使用で優位性を発揮するだろう。ヒールカウンターの厚いパッドは、踵のロックダウンを確実に行い、長距離走行時の安定を支える。
このアッパーの変更は、シリーズのデイリートレーナーとしての性格を強調するものだ。NOVABLAST 4のウーブン素材が通気性を犠牲にしていたのに対し、NOVABLAST 5はジャカードメッシュの利点を活かし、全体の着用感を洗練させた。結果として、走行後の回復が速く、累積疲労を最小限に抑えられる構造となっている。
アウトソールの耐久性とグリップ
アウトソールには、ASICS独自のAHAR LO(アハー ロー)と呼ばれる高密度ゴムが使用されている。この素材は、柔らかさを保ちつつ耐久性を高め、通常のゴムの2倍から3倍の耐摩耗性を誇る。NOVABLAST 5では、フォアフット部分にトランポリン構造を採用し、反発力を最大化するデザインが継続されている。
この構造は、ミッドソールのFF BLAST MAXと相まって、着地から蹴り出しまでの流れをスムーズにする。柔らかいゴムが地面との接触を柔和にし、硬い素材のように反発を損なうことなく、耐久性を維持する点が優れている。テスト走行では、路面の変化に対するグリップが安定し、ウェットコンディションでもスリップを最小限に抑えた。
アウトソールの進化は、シューズの寿命を延ばすだけでなく、走行の効率を高める。NOVABLASTシリーズの伝統を継承しつつ、素材の柔軟化により、ミッドソールのポテンシャルをフルに引き出す設計だ。これにより、ランナーは多様な路面で信頼できるパフォーマンスを期待できる。
重量と全体のバランス
NOVABLAST 5の重量は255g(US9)と、NOVABLAST 4の260gから軽減され、NOVABLAST 3の253gに近い値に戻った。この軽量化は、ミッドソールとアッパーの素材変更によるもので、走行時の軽快感を直接的に向上させる。
インソールにはEVA素材が用いられ、衝撃吸収を補助する。フォアフットとヒールの厚さが適度で、クッションの均一性を確保している。全体として、デイリートレーナーとしてのバランスが優れており、20km以上のロングランでも疲労が蓄積しにくい。テストでは、ペース変動時のレスポンスが良く、軽さと柔軟さが持続した。
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スペック
- 重量: 255g (US9メンズ)
- スタックハイト: ヒール41.5mm、フォアフット33.5mm
- ドロップ: 8mm
- ミッドソール: FF BLAST MAX
- アッパー: エンジニアードジャカードメッシュ
- アウトソール: AHAR LOゴム
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特徴
- 軽量で柔軟なミッドソールによる優れたクッション
- 通気性が高く、伸縮性のあるアッパー
- トランポリン構造のアウトソールで反発力強化
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良い点- 長距離走行時の疲労軽減効果が高い
- 通気性が向上し、季節を問わず快適
- 反発力が強く、ペースアップをサポート
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悪い点- 高速ペースで若干の重さを感じる場合あり
- 極端に狭い足型にはフィットしにくい可能性
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改善点
- 高速域での安定性をさらに強化
- 多様な幅オプションの追加
競合モデルとの位置づけ
NOVABLAST 5は、adidasのAdizero SLと類似した特性を持つ。Adizero SLはLightstrike Proミッドソールをフルレングスで使用し、エンジニアードメッシュのアッパーを採用。カーボンプレートなしで、純粋なミッドソールの感触を重視する点が共通だ。重量はAdizero SLが約238g(US9)と軽く、スタックハイトはヒール約35mm前後と低めだが、反発力のフィーリングが近い。
| モデル | 特徴 | 弱点 |
|---|---|---|
| NOVABLAST 5 | FF BLAST MAXによる軽量・柔軟・反発のバランス、通気性高いアッパー | 高速時の安定性がやや劣る |
| Adizero SL | Lightstrike Proの強力な反発、軽量設計で日常トレーニング向き | クッションが薄く、長距離で疲労蓄積しやすい |
この比較から、NOVABLAST 5はクッション重視のランナーに向き、Adizero SLはスピード志向に適する。市場では、両者が補完関係にあり、選択肢の多様性を高めている。
結論
NOVABLAST 5は、ミッドソールの革新により、軽さ、柔軟さ、反発力の理想的なバランスを実現したデイリートレーナーだ。過去モデルからの進化は、ランナーの日常を豊かにし、トレーニングの質を向上させる。競合との比較でも独自の強みを保ち、幅広い用途に対応可能だ。将来的に、ランニングシューズ業界はこうした素材革新が主流となり、持続可能なパフォーマンスを追求する流れが強まるだろう。このシューズは、単なるツールではなく、ランニングの喜びを再発見させる存在としておすすめできる。
参考資料