ASICSのSUPERBLAST 2は、前作から進化したミッドソール素材を採用し、長距離ランニングにおける快適さと安定性を追求したモデルとして注目を集めている。この記事では、ブランドの素材戦略を背景に、SUPERBLAST 2の構造や性能を詳しく分析する。ASICSがミッドソールを基軸に製品を差別化するアプローチを理解することで、ランナーは自身のニーズに合ったシューズを選びやすくなるだろう。
概要
ASICSはミッドソールの素材を多様なグレードで展開し、各モデルのポジショニングを明確にしている。SUPERBLAST 2はこの戦略の好例で、最上位のFF TURBO PLUSを上層部に、FF BLAST PLUS ECOを下層部に組み合わせた二重構造を採用。前作のSUPERBLAST 1ではFF TURBOとFF BLAST PLUSの組み合わせだったが、今回のアップデートにより反発力と耐久性が向上した。こうした素材の進化は、長距離でのクッション性と安定感を高め、日常のトレーニングからリカバリーランまで幅広い用途に対応する。ブランド全体のラインナップを見渡すと、NOVABLAST 4のようなエントリーレベルからMETASPEED SKY PARISのようなレーシングモデルまで、素材の階層化が価格や性能の差を生み出している。このレビューでは、こうした文脈を踏まえ、SUPERBLAST 2の具体的な特徴を検証していく。
ミッドソール素材の戦略
ASICSの製品開発では、ミッドソールの素材が核心を成す。現在、同ブランドは主に四つの素材を活用しており、それぞれの物理的特性とコストがモデルの性格を決定づける。FF BLAST PLUSは基本的なクッション性を提供するスタンダード素材で、耐久性に優れ、地表との接触部に適している。一方、FF BLAST PLUS ECOはバイオ由来成分を24%程度取り入れ、環境配慮を加味したアップグレード版だ。これにより、衝撃吸収力が向上しつつ、柔らかな質感を実現している。より上位のFF TURBOは反発力に特化し、レーシングシューズで用いられることが多いが、SUPERBLASTシリーズではこれをトレーニング向けに厚く積層するアレンジが施されている。最上位のFF TURBO PLUSは、さらに洗練されたエネルギー返還率を誇り、METASPEED SKY PARISのようにフルレングスで使用される場合もある。この階層構造により、ASICSは消費者の多様なニーズに応じ、製品をセグメント化している。SUPERBLAST 2の場合、下層のFF BLAST PLUS ECOが安定した接地感を、上層のFF TURBO PLUSが推進力を担うことで、ハイブリッドな性能を発揮する。このアプローチは、単なる素材の積み重ねではなく、走行時のダイナミクスを最適化するための戦略的な選択だと言える。
スペック詳細
SUPERBLAST 2のスペックは、長距離ランニングを念頭に置いた設計を反映している。ミッドソールの高さが特徴的で、安定性を保ちつつクッションを最大化するバランスが取れている。
- 重量: 27cm (US9) で249g
- スタックハイト: ヒール45mm、フォアフット37mm
- ドロップ: 8mm
- 主な技術: FF TURBO PLUS (上層)、FF BLAST PLUS ECO (下層)、ASICSGRIPアウトソール
- アッパー: エンジニアードウーブンメッシュ
- その他: ニュートラルサポート、最大クッション
これらの数値は、公式サイトや専門レビューサイトから確認されたもので、前作からの微調整が見られる。例えば、スタックハイトのわずかな低下は、走行時の最適化を意図したものだ。
SUPERBLAST 2の特徴
SUPERBLAST 2の最大の特徴は、二重ミッドソールの進化にある。下層のFF BLAST PLUS ECOは、地表との接触を柔らかく吸収し、耐久性を確保する。一方、上層のFF TURBO PLUSは、足裏に直接触れる部分で優れた反発力を発揮し、長時間のランニングでも疲労を軽減する。この組み合わせは、前作のFF TURBOからアップグレードされた点で、エネルギー効率の向上が期待できる。アッパー素材はエンジニアードウーブンメッシュに変更され、通気性が大幅に改善された。従来のモノメッシュでは熱がこもりやすいという指摘があったが、新素材は単層構造ながら通気孔を戦略的に配置し、夏場のランニングでも快適さを保つ。ヒールカウンターとパディングの配置は前作とほぼ同一で、ロックダウンの安定感を維持している。アウトソールにはASICSGRIPを部分的に使用し、軽量化を図りつつグリップ力を高めている。ベースの幅広設計は、ASICSの伝統的な安定志向を体現しており、アーチ部やフォアフット部の広さが転倒リスクを低減する。全体として、このシューズは爆発的なスピードより、持続的な快適さを優先したポジショニングを取っている。
- ミッドソール: 二重構造で反発力とクッションのバランス
- アッパー: 通気性向上のウーブンメッシュ
- アウトソール: 部分的なラバー配置で軽量とグリップの両立
- ベース幅: 広めで安定感重視
- 着用感: ロックダウンが強固でずれにくい
良い点
SUPERBLAST 2の強みは、長距離での安定性と快適さに集約される。ミッドソールの高さが45mmという高さながら、ベースの幅広設計により不安定さを感じさせない点が秀逸だ。実際に20kmのランニングテストでは、4分30秒/kmのペースでも安定感が際立ち、脳裏に浮かぶのは安心感のみだった。通気性の向上は夏場の実用性を高め、熱こもりが前作の弱点だった点を解消している。また、FF TURBO PLUSの採用により、反発力が自然に推進力を生み、トレーニングの質を向上させる。カーボンプレートを排除した設計は、怪我のリスクを低減し、日常使いの汎用性を広げている。
- 安定性: 高スタックながら幅広ベースで転倒しにくい
- 通気性: 新アッパーで熱がこもりにくい
- 反発力: FF TURBO PLUSがエネルギーを効率的に返す
- 汎用性: トレーニングからリカバリーまで対応
- 耐久性: 下層素材の強化で長持ち
悪い点
一方で、SUPERBLAST 2にはいくつかの改善の余地がある。重量が前作より若干増加した点は、軽快さを求めるランナーにとってマイナス要因となり得る。249gという数値は最大クッションクラスでは軽めだが、レーシングモデルと比較すると重く感じる場面がある。また、爆発的な弾力感が控えめで、METASPEED SKY PARISのような推進力の劇的な向上を期待すると物足りない。通気性の向上は歓迎されるが、アッパーの単層構造ゆえに耐久性がやや懸念される。高速ペースでの軽快さが不足する点も、用途を長距離トレーニングに限定してしまう要因だ。
- 重量増加: 前作比で重くなり、軽快さがやや損なわれる
- 弾力の控えめさ: レーシング並みの推進力は期待薄
- 耐久性の懸念: 単層アッパーが摩耗しやすい可能性
- 用途の限定: 高速レースよりトレーニング向き
- 価格帯の位置: 上位素材使用で手が出しにくい層も
他のモデルとの比較
ASICSのラインナップ内でSUPERBLAST 2を位置づけるには、他のモデルとの比較が有効だ。NOVABLAST 4はFF BLAST PLUS ECOを単独で使用し、日常トレーニング向けのエントリーモデルとして機能する。一方、METASPEED SKY PARISはFF TURBO PLUSをフルレングスで搭載し、レーシングに特化している。SUPERBLAST 1からの進化は、素材のアップグレードが主で、構造的な変化は最小限だ。これにより、馴染みのある着用感を保ちつつ性能を高めている。以下に主なモデルを比較した表を示す。
| モデル | 特徴 | 弱点 |
|---|---|---|
| SUPERBLAST 2 | 二重ミッドソール (FF TURBO PLUS + FF BLAST PLUS ECO)、高スタックで安定性重視 | 重量増加、爆発的な推進力不足 |
| SUPERBLAST 1 | FF TURBO + FF BLAST PLUS、通気性改善前の安定モデル | 通気性不足、素材の旧世代 |
| NOVABLAST 4 | FF BLAST PLUS ECO単独、環境配慮とクッションのバランス | 反発力控えめ、上位モデル比で性能劣る |
| METASPEED SKY PARIS | FF TURBO PLUSフル、軽量で高速レース向け | トレーニング用途に不向き、クッション薄め |
さらに、SUPERBLAST 2とSUPERBLAST 1の詳細比較を以下にまとめる。
| 項目 | SUPERBLAST 1 | SUPERBLAST 2 |
|---|---|---|
| 重量 | 256g (27cm/US9) | 249g (27cm/US9) |
| スタックハイト | ヒール45.5mm、フォアフット37.5mm | ヒール45mm、フォアフット37mm |
| ドロップ | 8mm | 8mm |
| 主な技術 | FF TURBO + FF BLAST PLUS | FF TURBO PLUS + FF BLAST PLUS ECO |
| 特徴 | 安定感重視の初期モデル | 通気性向上、素材アップグレード |
| 弱点 | 熱こもりやすい | 軽快さの微減 |
この比較から、SUPERBLAST 2は前作の強みを継承しつつ、環境対応と性能向上を図った進化形であることがわかる。
実際のランニング体験
SUPERBLAST 2の実走感は、安定性が際立つ。20kmのテストランでは、初めの1kmを5分10秒/kmペースでスタートし、徐々に4分30秒/kmまで加速した。ミッドソールの高さゆえに不安を覚えるランナーもいるかもしれないが、幅広ベースがそれを払拭する。FF TURBO PLUSの反発は、ペースアップ時に自然な推進力を与え、疲労蓄積を抑える。夏場のランニングでは、通気性の改善が顕著で、足の熱感がほとんどなかった。前作との左右比較では、素材アップグレードの差が微妙だが、全体的な一体感は変わらない。イージーランやリカバリーランで真価を発揮し、高速域でも安定を保つものの、レーシングのような劇的なブーストは控えめだ。この体験から、SUPERBLAST 2は日常の長距離パートナーとして最適化されていると言える。走行後のフィードバックとして、クッションの持続性が長時間のモチベーションを維持する要因となった。
結論と今後の示唆
SUPERBLAST 2は、ASICSの素材戦略を体現したモデルとして、長距離ランニングの快適さを再定義する存在だ。安定性とクッションのバランスが優れ、トレーニングの質を高める一方で、重量や推進力の点でさらなる洗練の余地がある。ランナーには、自身の走行スタイルに合った用途で活用することをおすすめする。例えば、日常トレーニング中心なら理想的だが、レース志向ならMETASPEED SKY PARISを検討すべきだろう。このシューズの登場は、業界全体でミッドソール技術の進化を加速させる兆しを示している。将来的に、環境配慮素材のさらなる統合が進むことで、ランニングシューズの持続可能性が高まる可能性がある。最終的に、SUPERBLAST 2は技術と実用性の融合を象徴し、ランナーの選択肢を広げる一足として位置づけられる。
参考資料