プーマの最新レーシングシューズ、ディビエイト ナイトロ エリート 3は、前モデルからの大幅なアップグレードを果たし、ランナーの期待を高めている。このレビューでは、ミッドソールの進化や軽量化されたアッパー、実際のランニングパフォーマンスに焦点を当て、日常トレーニングからレース本番まで対応する同社のラインナップを背景に考察する。プーマはランニングシューズをエブリデイ用、トレーニング用、レース用に分類しており、本モデルはレースデイの頂点に位置づけられる。技術の集約により、反発力と軽快さを両立した一足として、競技志向のランナーに新たな選択肢を提供するだろう。
概要
プーマのディビエイト ナイトロ エリート 3は、レーシングシューズとして設計されたモデルで、高いスタックハイトと先進的なフォーム素材を採用している。このシューズは、プーマのランニングラインナップの中でレースデイ用に位置づけられ、日常のトレーニングモデルであるディビエイト ナイトロ 3と対をなす。開発の背景には、国際陸上競技連盟の基準に準拠しつつ、最大限の推進力を追求する姿勢が見て取れる。全体として、軽量性と反発力を重視した構造が特徴で、ランナーが速く効率的に走れるよう工夫されている。プーマはこれまで、ランニング市場で独自の技術を展開してきたが、本モデルでは素材の変更と構造の最適化により、さらなる進化を遂げたと言える。
- スペック:
- 重量: 204g (US Men’s 9 / 27cm)
- ヒールスタック: 39.2mm
- フォアフットスタック: 28.6mm
- ドロップ: 10.6mm
- ミッドソール素材: ナイトロ エリート フォーム (アリファティック TPU)
- アッパー素材: ウルトラウィーブ
- アウトソール: プーマグリップ ラバー
ミッドソールの進化
ディビエイト ナイトロ エリート 3のミッドソールは、前モデルから大幅に改良され、アリファティック TPUを基調としたナイトロ エリート フォームを採用している。この素材は、従来のPEBAフォームに窒素を注入したものから移行したもので、耐久性とエネルギー返還効率の向上を狙った選択だ。プーマによると、このフォームは内耐久性が高く、反発力の面で優位性を持つ。構造的には、二層のフォーム間にパワープレートと呼ばれるカーボンプレートを挿入し、上層部と下層部で厚みを変えることで、足の動きを自然にサポートする。ヒール部が厚く、フォアフット部が薄くなる設計は、ミッドフットストライクを促進し、ランナーの推進力を最大化する。実際の使用感では、この組み合わせがエネルギーを蓄積し、爆発的なトーオフを実現する点が際立つ。国際基準のスタックハイト上限に近づけたことで、クッション性も向上し、長距離レースでの疲労軽減が期待できる。こうした技術の統合は、プーマがランニング市場での競争力を高めるための戦略的な一手であり、素材科学の進歩を体現している。
アッパーのデザインと素材
アッパーにはウルトラウィーブと呼ばれる極薄のエンジニアードメッシュを採用し、前モデルのモノメッシュから軽量化を図っている。この素材は、単層構造で透明感があり、内部のソックスが透けて見えるほど薄いながら、PWRTAPEによる補強で耐久性を確保している。全体の重量削減に大きく寄与しており、プーマの軽量志向が明確に表れている。ヒールカウンター周囲のデザインも変更され、ロールドカラーを導入することで、発泡材を薄くしつつサポート性を維持。従来の厚いパッドを排除した結果、空間が楕円形に近くなり、足首のフィット感が向上した。この変化は、ランナーの一体感を高め、動きのロスを最小限に抑える。全体として、アッパーは通気性と軽さを優先した設計で、レース中の快適さを追求しているが、薄さゆえの耐久性については長期使用で確認する必要があるだろう。プーマのこのアプローチは、シューズの軽量化トレンドを反映し、競合他社との差別化を図っている。
フィット感と快適さ
フィット感は、前モデルから改善され、足首周りのロックダウンが強化されている。ロールドカラーの採用により、パッドを薄くしたにもかかわらず、アキレス腱部が密着し、ヒールスリップを防ぐ。シューレースシステムは、トンネル構造を左右に配置し、舌のずれを防止する仕組みで、トレーニングモデルのディビエイト ナイトロ 3と類似している。舌自体はネオプレン調の柔らかい素材で、面積が広く足の甲をカバーする。実際の着用では、余裕がありながらも締め付けが均等で、快適な履き心地を提供する。ただし、シューレースが滑らかな素材で短めのため、結び目の調整に工夫が必要だ。このフィットは、中足部を安定させ、レース中の動きをスムーズにするが、幅広の足にはやや狭く感じる可能性がある。全体の快適さは、軽量さとサポートのバランスが取れており、長時間の使用でもストレスが少ない。
- 特徴:
- ウルトラウィーブアッパーによる優れた通気性
- ロールドカラーで強化されたヒールロック
- ネオプレン調舌の広いカバーエリア
- シューレースのトンネル構造で安定性向上
アウトソールの性能
アウトソールにはプーマグリップ ラバーを使用し、優れたグリップ力を発揮する。ラバー部分はオレンジとピンクの配色で視認性が高く、厚みはロードレーシングシューズとしては標準的だ。露出したミッドソール部分はアリファティック TPUで、耐久性が高い一方、外傷に対する脆弱性がある。湿った路面や滑りやすい地形でも安定した接地面を提供し、ランナーの信頼を獲得している。この設計は、軽量性を保ちつつ実用性を重視したもので、レース中の変則的なコンディションに対応可能だ。耐久性については、ラバー厚が十分で、日常使用でも摩耗が少ないが、露出部は注意が必要。プーマのアウトソール技術は、ブランドの強みとして知られ、本モデルでもその評価を維持している。
-
メリット (
良い点):- 優れたグリップ力で多様な路面対応
- 軽量性を損なわないラバー配置
- 耐久性の高いアリファティック TPU露出部
-
デメリット (
悪い点):- 露出部の外傷リスク
- 極端に薄いため長期耐久性に懸念
前モデルとの比較
ディビエイト ナイトロ エリート 3は、前モデルのエリート 2からスタックハイトを増やし、重量を軽減するなど、明確な進化を遂げている。ミッドソールの素材変更とパワープレートの最適化により、反発力が向上し、レースパフォーマンスが強化された。一方、トレーニング用のディビエイト ナイトロ 3は、よりクッション性が高く、日常使用に適した設計だ。以下に、エリート 2とエリート 3の比較を示す。
| 項目 | ディビエイト ナイトロ エリート 2 | ディビエイト ナイトロ エリート 3 |
|---|---|---|
| 重量 | 214g (US Men’s 9 / 27cm) | 204g (US Men’s 9 / 27cm) |
| スタックハイト (ヒール) | 35.0mm | 39.2mm |
| スタックハイト (フォアフット) | 25.9mm | 28.6mm |
| ドロップ | 9.1mm | 10.6mm |
| 主な技術 | PEBAフォーム + パワープレート | ナイトロ エリート フォーム (アリファティック TPU) + パワープレート |
| 特徴 | 安定したクッションとグリップ | 軽量化と高い反発力 |
| 弱点 | スタックハイトの低さによるクッション不足 | 狭いトゥボックスによるフィット制限 |
この比較から、エリート 3はレース志向を強め、重量減とスタック増で競争力を高めたことがわかる。トレーニングモデルのナイトロ 3 (重量268g、ヒール37.4mm)との違いは、日常耐久性 vs レーススピードのトレードオフだ。
- 改善点:
- スタックハイトの増加でクッション向上
- 素材変更による軽量化と耐久性強化
- フィット感の最適化で一体感向上
パフォーマンスとランニング体験
実際のランニングでは、ディビエイト ナイトロ エリート 3は軽快さと反発力が際立つ。11kmのテストランで、ペースを徐々に上げたところ、ミッドフットストライク時にフォームのバウンスが強く感じられ、エネルギー効率が高い。400mインターバルでは、パワープレートの弾性が速いペースで真価を発揮し、3分40秒/kmの高速走行も快適だった。このパフォーマンスは、メタスピード スカイのような軽やかさを思わせ、レース中の推進力を支える。全体として、ミッドストライカー向きで、マラソンやハーフに適するが、ヒールストライカーにはドロップがやや大きい。耐久性と安定性のバランスが取れ、技術の集約がランナーのポテンシャルを引き出す。
まとめ
ディビエイト ナイトロ エリート 3は、プーマの技術革新を象徴する一足で、軽量性と反発力の向上により、レースシューズの新基準を提示する。素材の進化と構造最適化が、効率的な走りを可能にし、ランナーの選択肢を広げるだろう。ただし、フィットの狭さや耐久性の観点から、個人の足型に合わせた選定が重要だ。将来的に、プーマのこのアプローチは、ランニング業界全体のトレンドを加速させ、よりアクセスしやすい高性能シューズの普及を促す可能性がある。競技レベルの向上を目指すランナーにとって、検討に値するモデルだ。
参考資料